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ゲストのコラム
「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−3 「繁殖を見直しましょう」」

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2009年4月21日

 現場を歩いていて「繁殖牛の分娩間隔はどの程度ですか?」とお聞きして、正確な数字が返ってくる肉牛農家さんが少ないのが気になります。現状を把握していて初めて、明確な目標が立てられます。現状が分からないと、今の状態が良いのか悪いのかも判断できません。何となく「繁殖は悪くない」という程度の、記憶に頼っていた観察から、繁殖台帳など記録をつけることで飼養管理上の問題点を浮き彫りにしてください。
 2産、3産しても5回以上つけないとだめな場合は、淘汰することも考えなくてはいけませんが、正確な記録がないとそれも出来ないままにずるずると飼い続けることになります。生き甲斐で牛を飼っている方は別にして、肉牛で生活している農家さんは、分娩間隔や産子記録などを把握しながら経営を実践する必要があります。「頭数が多すぎて記録するヒマがないよ」とおっしゃる方は、自分の能力以上に牛を飼っている可能性があります。その場合は、身の丈にあった頭数に減らすことで、効率的な経営が可能になるかも分かりません。
 多頭飼育でスケールメリットを追求することも必要でしょうが、頭数が多くて1頭ずつの管理がおろそかになるようでは、経営としては疑問符がつきます。私の経験で言えば家族経営(夫婦2人)では、繁殖牛40〜60頭程度の規模が一番良いと感じます。100頭を越えるような大型経営では、万歩計と繁殖記録装置の組み合わせや分娩予測機器など、情報機材や管理用機械を導入しないと、手作業による記帳だけではとても管理が追いつかなくなります。
 あまりにも頭数が多くて、牛を飼っているのではなく牛に飼われている状況になることは避けたいものです。

(つづく)
著:十勝農業改良普及センター十勝北部支所 出雲将之

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