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戸田克樹のコラム
第127話「安全なお産のために~前か後ろか①~」

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2017年3月8日

「逆子で引っ張っても出せないんだ。すぐきてくれ」
との電話があり、急いで農場に向かったときのことでした。

到着すると、お母さん牛は苦しそうに座り込んでいました。
あかちゃん牛の両足はすでに外陰部からでていて、滑車を使って引っ張った跡も見受けられました。
「滑車でも引っ張ったけど、全然でてこなくて」

あかちゃん牛はお母さんの体から出るとき、へその緒が切れた瞬間から自発呼吸を始めます。
後ろ足から出てこようとしている場合、へその緒が切れて自発呼吸が始まるときにはまだ顔がお母さんのからだの中。そのため、引っ張り始めたらとにかく早く出すことが重要なのです。

つまり、後ろ足からでて来ている場合は「これなら引っ張ってもスムーズに出せる」という確信がなければ引っ張ってはいけません。途中で引っかかり手間どってしまえば、あっという間に死んでしまいます。

滑車で引っ張られた痕跡を見て、「もうへその緒も切れてしまっているかもしれないな」と嫌な気持ちで産道に手をいれました

!?
これ、逆子じゃないですよ??

そう、出て来ている足は前足だったのです。
農家さんはなぜ後ろ足だと思い込んでしまったのでしょう。
そこには重要なポイントが隠されていたのでした。

つづく

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