秘境の郷の牛飼いだより　～第１７回～

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2017年2月24日

⑰ 椎葉の秘蜜 その２

　椎葉村は大自然に囲まれており、その自然のなかで取れる日本ミツバチの蜂蜜はとても貴重だとお話ししましたが、世の中にはそういった事を利用して金儲けをしようとする人達が必ずいます。残念ながら椎葉村にもそういう人たちがいて、よそで取れたものや、中国産蜂蜜を混ぜたものを販売する人が現れました。（畜産の世界でも心許ない人達が産地偽装や色々なごまかしをやっていますよね・・・残念です）

　実際購入した人達からもクレームが来たので、これではせっかくの貴重な椎葉の蜂蜜の価値が下がってしまうと思い、数人の勇志達と”プロジェクトハニー”と言うグループを結成し、本当の蜂蜜を届ける事にしました。今では３０名ほどの会員が椎葉村内で取れた蜂蜜　”椎葉の秘密”　を生産、販売しています。　”椎葉の秘密”のラベルを貼るには色々な決まり事を定めています。（蜜を取る時期・搾る方法・幼虫、花粉を混入させない・瓶詰めの仕方等）
　このシールが張ってある蜂蜜は純粋の椎葉村産ですから安心して食して下さい。椎葉のふるさと納税の返礼品としても非常に人気が高く、申し込みが多くありますが、前回お話ししたように数量が限定されてしまいます。

○恐るべしロイヤルゼリー
　皆さんもロイヤルゼリーという言葉は聞いたことがありますよね。滋養強壮の元として販売もされています。
　ミツバチの家族には３種類のハチがいます。一匹の女王バチと数千匹の働きバチ、夏の間だけいる真っ黒な色をした雄バチ（これは見た事がない人が多いと思います）です。
　働きバチと雄バチの寿命は１ヶ月から２ヶ月ですが、女王バチはなんと３年も生きるんですよ。もともと女王バチと働きバチは同じ卵から孵るんですが、与えられる餌によってこんなに寿命が違うんですよ。働きバチの餌は蜜と花粉ですが、女王バチには孵化してから死ぬまでロイヤルゼリーが与えられます。このおかげで毎日数十個の卵を３年も産み続けることが出来ます。恐るべしロイヤルゼリーですね。（牛にもホルモン剤以外でこういったものがあるといいんですが・・・）
　私も女王バチの巣の中からロイヤルゼリーを取り出して舐めてみましたが、とても酸っぱくてまずかったです。市販されているものは上手く味付け、増量されているんでしょうね。

おなかが大きいのが女王バチ（卵を産む場所を探しています）

三段になっている濾し器で濾しているところ

　雄バチは春先の繁殖期に数百匹が産まれますが、蜜を集める事はしません。またケンを持たないので刺すことはありませんし、新しい女王バチと交尾できるのは、数匹しかいません。他の雄バチ達は夏には全部死んでしまいます。数千頭に一頭位しかできない種雄牛と似ていますね。
　人間もこのような社会だったら、私みたいな痩せた体型の人は、恋人も出来ず、嫁さんを貰うこともなく、去勢されてすぐに鍋ヶ島行きでしょうね・・・人間で良かった。

つづく

宮崎県椎葉村　椎葉 勇