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戸田克樹のコラム
第122話「薬が効かない耐性菌②」

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2017年2月1日

手が乾燥します。かゆみをともなうほどに。そこでクリームを毎日ぬっています。それでも乾燥はとまりません。診療車に乗るたびに塗ることにしました。するとどうでしょう。

ハンドルが少しヌメヌメし始めました(笑)。

耐性菌の話の前に、ペニシリンなどの「βラクタム系抗生物質」の作用機序を軽くおさらいします。この抗生物質のターゲットは「細胞壁」でした。
細菌が細胞壁をうまくつくれないようにして、もろい壁しかもたない細菌が外部環境に耐えきれず破裂してしまうという作用をもたらします。

細胞壁をもたない細菌に対しては効果がないのは皆さんご存知のとおりです。

ペニシリン耐性菌と呼ばれる細菌はなぜペニシリンが効かないのか

答えは「βラクタム環」にありました。
ペニシリンを含むβラクタム系の抗生物質は「細菌が細胞壁合成に本来必要とするD-アラニル-Dアラニンと構造が似ている」ことが重要なポイントでした。
そう!構造なのです!

細菌の中にはこの構造を壊すことのできる物質を持っているヤツらが存在していたのです。
その名も「βラクタマーゼ産生菌」の登場です!
彼らは抗生物質のもつβラクタム環という構造を壊すことのできる酵素を作り出せます。

こうなると、細菌は抗生物質の構造をバンバン壊していきます。
効果なんてありません。次々に壊されていきます。そして、このような細菌は何のジャマを受けることもなくその数をどんどん増やしていきます。

これがペニシリン耐性菌と呼ばれる細菌たちが生き残ることができる理由なのです。

彼らにペニシリンは効きません!
薬を使ってもどんどん増えていきますし、状況は悪くなる一方です。
どうしたらいいのでしょうか!!!

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