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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−34 「脂肪の話題(5)」 (東京都 村田六蔵)」

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2009年1月6日

 もう少し乳牛の話題です。脂肪酸カルシウムは、日本で飼料原料になった理由に、北海道の牛乳買取で乳脂肪が3.2%から3.5%になったときです。これは、乳牛で試験を行なうと、明らかに乳脂肪の向上効果があり、当時なかなか脂肪が上がらなかった対策として配合飼料に入れていきました。このために、北海道でも放牧形態が減少していった理由になります。当時放牧ではなかなか乳脂肪が上がらないとことが多かったのです。
 この脂肪酸カルシウムの試験を行なったときに、給与した牛の牛乳中の脂肪酸組成を調べて驚きました。それは、牛乳中に脂肪酸カルシウム由来の不飽和脂肪が増えていたのです。脂肪酸カルシウムは、石鹸を作る原理と同じで、植物油脂にナトリウムを加えると石鹸になりので、脂肪酸カルシウムは、ナトリウムの代わりにカルシウムを加えたものです。そのために、カルシウム石鹸と呼ばれていました。
 そのことから、牛乳中の脂肪酸組成についての問題点がわかってきました。その頃、ある牧場から牛乳から作る生クリームに異臭が出るという相談がありました。この牧場では、粗飼料の品質が悪く、乾草は雨に濡れた茶色のもので、サイレージは、酪酸臭、アンモニア臭が強いもので、あまり牛が食べていませんでした。その理由としては、サイレージの臭いが牛乳に移ったということになっていましたが、それだけではなく、十分な反芻をしていないために、牛乳中の脂肪酸組成が変化して、不飽和脂肪酸割合が上がったために、特に生クリームが酸化したものになったと考えられました。
 また、別な地域では、牛乳の異常風味が夏場に発生しました。ここでは、当時非常に安価な値段でアーモンド皮が流通しており、多く農家がこれを繊維代わりに使っていました。なかなか理由がわからなかったのですが、アーモンド皮は、乾草から見ると反芻材料としては、繊維分が少ないので酸化しやすい牛乳の脂肪酸組成になっていたことと、夏場の高温な時期のために搾乳した牛乳がバルククーラーの中で牛乳温度を下げるための攪拌が多く行なわれることで酸化を促進したものと思われます。この地域の対策は、アーモンド皮を止めて乾草かイナワラを1kg給与することになったそうです。
 以外と異常風味は、今もあるようですが脂肪酸組成のアンバランスが原因なっていると思います。

(つづく)

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