「ツキへん」の脂肪と「サンずい」の脂肪があります。これは、脂肪をわかりやすく説明するときに用いていますが、「ツキへん」とは「脂」で「サンずい」とは「油」になります。「脂」は動物性で「油」は植物性と言い直すことですが、動物油脂(飽和脂肪酸型)と植物油脂(不飽和脂肪酸型)の違いですが、これの違いは、個体か液体かの違いになります。 牛は、基本的に穀類のとうもろこしや大豆由来の植物油を食べていますが、牛の体脂肪には動物性の脂肪に変化しています。これは、牛が植物油脂を動物油脂に変換していることですが、この機能がルーメンで行なわれています。ルーメンでは、不飽和脂肪酸はルーメン内にある水素と結合し飽和脂肪酸に変換されていきます(水素添加と呼ばれています)。この水素の供給源としては、唾液が主体です。よく勉強会などでは、「牛は太田胃散を体に持っています」と説明するのですが、唾液はルーメンでのpHを安定させるための中和剤の効果も持っているのですが、もう1つの働きが不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸への変換です。 ですから、唾液を充分に分泌していないと、ルーメンpHが下がってしまい、飽和脂肪酸への転換が起こりにくくなるために牛へのダメージが非常に大きくなります。ルーメン機能の障害は、この唾液分泌が上手く行なわれないことから始まっているのです。 唾液をたくさん出すためには、どうすればよいかと言えば、牛に「反芻」をさせることです。「反芻」をすることで、ルーメンに唾液を十分に供給することができるので、ルーメンpHのコントロールと水素添加が十分に行なわれることになります。「反芻」させるためには、繊維分を与えれば良いということです。だだ、繊維分は、あくまでも「反芻」させる材料ですからある程度の長さと固さが必要になります。 例えば、イナワラと小麦ワラでは、同じ量を食べてもうしの反芻時間や牛舎での落ち着きなどではイナワラの方がずっと優れていると思います。また、イナワラでも、晩生のものと早生のものでも異なります。晩生の方が繊維分が高くて細かく切断して給与する特に違いがあります。 肥育で成績のよい農家さんでは、このイナワラの品質には非常に気にしている方が多いように思います。イナワラが悪いといい牛が出来ないと言い切る農家さんもいます。
(つづく) |