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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−13 「とうもろこしを作ろう その3」 (東京都 村田六蔵)」

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2008年7月22日

 肥料についての話しが長くなってきたので、とうもろこしの品種についての話題をしましょう。
 品種については、各メーカーのカタログを見るとどのカタログも品種の特性として「倒伏に強い」「病気に強い」「収量が多い」「子実が大きい」などとありますが、どこにも牛に食べさせた結果を載せているのはありません。これは、とうもろこしを育種や海外の品種を選抜している人たちのほとんどが牛については、素人の方ばかりです。育種をするので牛に触ったり食べさせたりすることは必要なしと考えているようです。(すべての方とは言いませんが)ですから、いい品種が牛にとっていいのかと言うと、??????かもしれません。
 とうもろこしは、アメリカでの育種研究が進んでいるのですが、牛からの視点で見るとかなり面白いものがあります。まずその1つが、Waxy(ワキシー)コーンと呼ばれるとうもろこしです。これは、一言で言うと、フレーク加工されたとうもろこしです。
 一体何のことかわかりにくいと思いますが、これは日本の表現をすると「もちきび」というとわかりやすいかもしれません。これは、米でいうと「もち米」のことです。とうもろこしの品種の中でエネルギーは油とでんぷんですが、このでんぷんの中身がほとんど「アミロペクチン」のものです。でんぷんは、この「アミロペクチン」と「アミロース」を含んでいますが、この割合が一般的なとうもろこしでは、「アミロース」が25%程度含まれていますが、このWaxyではほとんどありません。そのために糊化温度が低い(糊のようになりやすい)ので、牛のルーメン微生物で分解されるスピードが速くて、またルーメン内でほとんど分解されてしまいます。
 この特性は、まさにフレークによるアルファー化をこの品種がしているようなものです。アメリカでは、一般的な品種よりもやや収量が少ないのが欠点ですが、種子の価格は流通しているものと同等です。
 個人的な見解ですが、収量は少ないですが硝酸態窒素が高くなると予想される畑などではルーメン内でのアンモニアとのバランスがでんぷんの分解スピードと合わせていいようであれば日本での利用性は高いのではないでしょうかね?どちらにしても、牛を使った試験をどこかでやって現場に普及してほしいものです。
(つづく)
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