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ゲストのコラム
「幸せな牛飼いとなるための10カ条 番外編 「繁殖肥育一貫経営をめざそう1」」

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2008年6月24日

 一般的な和牛農家さんは、繁殖牛を飼育して肥育素牛を市場販売される方が多いと思います。
 肥育に関しては「和牛肥育は熟練のワザがいるので素人では難しい」と思っている方が多いのと、「素牛から肥育出荷まで20ヶ月もお金が入ってこないと、ウチは経済がもたないよ」あるいは「素牛が50万円で売れるのに、肥育して枝肉にしたら60万円にしかならなかったらどうするんだ」という意見が多いと思います。
 しかし、私は和牛経営究極の姿は、繁殖肥育一貫経営だと思っています。一貫経営では、素牛で化粧肉をつける必要がなく、育成から肥育まで無駄のない飼養管理が可能となります。また、精液確保のことで悩むことが無くなります。家畜市場で評価の高い種雄牛の精液を、無理して確保する必要がありません。交配は繁殖牛の育種価を参考に、不足する能力を補完できる種雄牛をつければ良いのです。例えば、家畜市場評価は低いけれど、枝肉共励会では実績のある「北仁」や、市場出荷しても評価が心配な新しい種雄牛でも、枝肉になれば関係ありません。
 「養牛の友 H20年3月号」「現代農業H18年7、11月号」にも書かせて頂きましたが、「誰が肥育しても自然に大きくなってくれる理想の子牛」を育成できれば、肥育はそんなに難しくありません。その理想の子牛造りのカギを、繁殖農家さんが握っています。現に私の知り合いで、繁殖牛を100頭以上飼育する農家さんが、親父さんの趣味で毎年3頭の肥育牛を出荷していますが、枝肉格付けは常にA4以上です。その人は「どうしてこんな簡単にできる肥育をみんなしないんだ」とおっしゃっていました。
写真の肥育牛は、文中に出てくる繁殖農家の肥育牛です。A5格付けで565kg×2,160円でした。

つづく
著:胆振普及センター 出雲将之

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