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和牛の世界はこれまで伝承芸能的なところがありました。繁殖牛の管理や肥育技術など、地域の古老から教わって技術が継承されてきた側面があります。経験から来る技術は大事で、長い経験を積んだ牛飼いの人には、「かなわないなあ」と思わせられることがよくあります。しかし、科学的根拠に基づく飼い方がずいぶん研究されて来ており、シェパード中央家畜診療所の松本先生の著書「さらによくなる子牛生産」の中に述べているように、色んな場面での対処法とその理由について大いに勉強すべきです。 例えば「牛の腹は藁で作る」ということに関しては、離乳が終わった育成牛や親牛には当てはまりますが、離乳前の子牛さんには当てはまらないことが最近分かってきています。また「初産牛を分娩介助したらくせになる」などは、根拠のないことだからと獣医さんも、必要に応じて分娩介助するように薦めています。 牛飼いの先輩から教わった技術は鵜呑みにせず、「どうして、そうなるんだろうか?」その根拠を十分理解した上で、飼養管理に当たることが重要です。えさ屋さんや薬屋さんなど、色んな形でアドバイスを受ける機会は多いですが、松本先生の著書などをしっかり勉強して理論を学んでください。 以前勤務していた新ひだか町静内では、松本先生の著書に書いてある技術を忠実に守って管理するよう、指導を徹底したおかげで農家さんは素晴らしい子牛を市場に上場することが出来ました。経験と知識の両方が備わった時、幸せな牛飼いが実現できると言えます。
つづく 著:胆振普及センター 出雲将之 |