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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−9 「放牧しようか その3」 (東京都 村田六蔵)」

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2008年3月11日

 いろいろ手をかける管理をしても、肥料をやりすぎたりすると、食べなくってしまいます。特に、購入した肥料の窒素含量(N)が高いものを播くと、草の中の糖含量が減りますので、嗜好性が低下します。これは、作物生理の特徴なのですが、窒素をたくさん吸収した作物は、糖含量が低くなる相関があります。
 また、窒素をたくさん吸収すると加里(K)もたくさん吸収します。しかし窒素と加里をたくさん吸収すると、カルシウムとマグネシウムを吸収が減ります。
 このような、相関関係がありますので、窒素が多い草は牛か視るとよい草ではないのです。窒素をたくさん吸収した草は、本来は作物の中でタンパク質へ合成されるのですが、日照不足などの条件が加わると硝酸態窒素のままで作物のなかに蓄積されます。
 硝酸態窒素については、摂取量が多くなると硝酸がルーメン内で亜硝酸に分解されたものが血中に入り赤血球にいたずらをして、いろいろな問題を起こします。これが硝酸中毒と呼ばれているものです。わざわざ自分で作った草で牛に障害を起こすことほどもったいないことはないと思うのですがいかがでしょうか?
 そこで、放牧地での肥料はどうしたらよいのでしょうか?
答えは、牛に聞くことですが、経験からは肥料は、放牧草の緑色が薄くなったり、再生が悪くなった時などに、少し播く程度で十分です。もともと放牧地では、草を伸ばす必要ではなく出来るだけ地際まで食べさせることですから、窒素などは多くなると問題だけが多くなっていることを理解して下さい。

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 このように取りとめもなく文書にしていると、何か難しいことのようですが、まずは放牧できるような土地があれば、牛を放してみることです。そうすると、以外ですが牛が勝手に対応してくれます。牛はもともと舎飼いされたものではなく、野に放たれていた動物ですから、それほど心配ありません。ある経験では、舎飼いしていた酪農家の搾乳牛に放牧地を作り、放したらそれまで腫れていた足がよくなって、今までより元気なった事例はたくさんあります。おまけに作っているチーズの質まで変わったところもあります。
 最近では、耕作放棄地に牛を放して管理することも多くなってきていますが、その時でも、その辺の雑草をムシャムシャ食べています。これらの、放棄地の生草には肥料分が少ないのでビタミン・ミネラルが多く含まれていてそれらを食べた牛の初乳まで濃くなります。特に乳中の抗菌性タンパク質が増加することもわかっています。
 とりあえず、日光を浴びて、そこそこ生草を食べれる環境を作ってやることで、意外とストレスをなくしてやると、おとなしく飼い主の言うこと聞く、人から見ると「扱いやすい牛」になり牛から視ると「やっと牛らしく扱ってくれたか」という信頼関係ができるかもしれませんよ!

放牧時の注意は、牧野ダニによって媒介されるピロプラズマ病があります。この予防策は、放牧前に馴致させることや秋に短期的に放牧することや衛生管理状態の改善やダニの駆除などがです。詳しくは獣医師さんに相談してください。
(つづく)

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