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ゲストのコラム
「牛から視たエサの話−7 「放牧しようか その1」 (東京都 村田六蔵)」

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2008年2月26日

 自給飼料では、繁殖牛を中心に放牧についても盛んに推進されています。
これは、耕作放棄地を利用しようとすることから始まったものですが、今は転作田などの利用も増えてきています。放牧も自給飼料を作らなくなると同じく減少してきていたのですが、放牧場合は、放牧地の管理が上手くいかないことなどがその理由だと思います。
 ニュージーランドの研究者の話を聴いた時には、まさに「目から鱗」でした。放牧地作りもそうですが、牛を放牧するという技術にはたくさん学びました。
 まずは、春先に放牧を開始する時期が、かなり早い時期です。これは、草の高さが“足のくるぶし”になると放牧する。そうすると、春先に一番生育する栄養の高い草を豊富に食べさせることができます。放牧草が伸びて放牧すると、牛は葉先の柔かい部分だけを食べて実際の乾物量は少ないことになるのと食べない草を踏みつけて放牧地が傷んできたり、雑草が多くなったりします。
そのために、イメージとしては、「こんな時期に放牧?」くらいから始めることが実は放牧地を管理するポイントです。

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 放牧しようとする畑はどちらかというとあまり条件のよいところばかりではありませんね!
北海道によくあるような放牧地をつくるなんて都府県では難しいし、作る草の種類も違います。よく例を出すのが、ゴルフ場です。ゴルフ場は、寒冷地(降雪地帯)では半年くらいは雪の下ですから、余程のモノ好きでないとやりません。(たまに春先にグリーンだけ溶かして雪の上でカラーボールでしている人がいますが)
 しかし、暖地(関東以西かな?)では、一年中グリーンもラフも緑で楽しめますが、これは夏草と冬草をオーバーシードしているからです。だからよく見ると夏と冬では草が違うのです。これらを管理するためにゴルフ場ではグリーンキーパーがいます。
 さて、これを放牧地で考えると、春播きした放牧地の草は、夏向きですから、秋以降は枯れてしまいます。そこで今度は、秋には冬向きの草を播けばよいのです。例えば、今からだと秋播きですから、イタリアンライグラスかペレニアルライグラスを播きます。播種量は、10アール(1反)当り4kg以上がよいでしょう。そして、くるぶし位まで伸びたら牛を放して下さい。もちろん、周りには柵をして下さいね。但し、出来るだけ放牧経験のある牛を入れることが必要です。未経験の牛は、興奮し走り周り柵を壊したり、逃げ出したりしますし、電気柵(電牧)などに驚いて逆立ちする牛が出ます。(育成で逆立ちを見ましたよ!)
 そうして、春から初夏にかけては、夏草を播きます。発芽がよく生育が早いミレットやヒエがよいでしょう。これも10アール当り4kg以上播きます。後は牛に踏みつけさせて下さい。この牛に踏みつけさせることを「蹄耕法」といいます。種を播いて牛に鎮圧させるといことです。この方法は、機械作業ができないような傾斜地や面積の小さな畑、林間地などに向いた方法です。
(つづく)

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