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ゲストのコラム
「いい農場の秘密こっそり教えます!最終話〜@どないすんねん嫁のグチ3〜」

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2007年7月31日

 次に「外的コントロールをしない」。
「外的コントロール」とは聞きなれない言葉ですが、心理学者のウイリアム・グラッサー博士が提唱しています。
人が不幸を感じる理由は、満足できる人間関係がないからです。
職場がどんなに忙しくて給料が安くても、満足できる人間関係があれば、人は不幸とは思いません。
ところが、職場や農場、家庭の中に外的コントロールを使う人がいると、苦痛に感じます。

外的コントロールの表れ方は、「批判する」「責める」「文句を言う」「ガミガミ言う」「脅かす」「罰する」「褒美でつる」です。
ほとんどの人が、外的コントロールで相手を変えられると思っています。あるいは、相手を変えなければいけないと思っています。
ストレスを感じる農場や家庭や職場では外的コントロールが横行しています。
そのため、農場内は円満さに欠け、メンバーや家族は不愉快な思いをしています。

農場でもよくあることですが、たとえば父親と息子が対立している時、相手の感情の爆発に対して、感情の爆発で応戦することです。
何かを提案しても、「そんなこと無駄だ! 前も失敗したじゃないか!」などと言われると、言われたほうも、感情が爆発して、気まずくなり仕事をする意欲がなくなります。「言われたことだけすればいいや」とか「自分の受け持ちの作業さえすればいいや」という気持ちになり、ろくな仕事ができません。

自分で問題を見つけて、自分で考え、自分で行動できなければ、やった仕事の質は上がりません。

ウイリアム博士は「人は外的コントロールで変えられない。これは真理で、この事実を理解していない人類は、心理学的に発展途上である」と言います。

わたしもまだ、発展途上なのです。子供に対して、ついつい批判したり文句を言ったり、あるいは、ほうびで釣ったりよくしていましたね。
「外的コントロールは使わない」と言われると、ではどうすればいいのでしょうか。
まず、基本的にメンバーのみんなに持ってもらいたいのが
経営者が従業員に対して持たなければいけないと言われる4つの「忍耐」「愛情」「理解」「諦め」です。
具体的には、「質問型のコミュニケーションを使い、相手にとるべき行動を自ら決めてもらう」ことです。
この時、農場の何もわかっていない新入社員に対しては質問だけでは、お話になりません。
なにをどうしていいかわかりませんから、始めはもちろん教育からでしょう。1年目2年目3年目と進むうちに、質問型のコミュニケーションを増やしていくことになります。

農家の嫁も持たないとやっていけないことは、やはり「忍耐」「愛情」「理解」「諦め」です。

「農場のメンバーの“聴く”トレーニング」
いくらミーティングを開いても、そこのメンバーみんなが「聴く」ことができなくては、話がでません。とくに一般的に弱い立場にある人は、発言しません。
何か提案や不満を言うと、「そんなことは、できるはずがない!」と頭ごなしに農場長や父親から言われると、言った人は「提案をしても、どうせ聴いてくれないし、いやな思いをするから、もう言わない」と思い次からは何か思っていても発言をしません。

そこの農場のみんな、特に力を持っている人が、他の人の話を聴けなければ、ミーティングを開いてもいい効果が出ません。
悪い情報が出た時、例えば、牛の調子が悪かったり、成績が上がらなかったり、仕事の不満を言ったりのような、悪い情報は力の強い人にとって気持ちのいいものではありません。
アメリカでは、上司は部下が悪い情報を言ってきた時には、まず「言いにくいことを言ってくれて、ありがとう」と言わなければいけないそうです。
(終わり(著:山本浩通))

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