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ゲストのコラム
「いい農場の秘密こっそり教えます!26〜@どないすんねん嫁のグチ2〜」

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2007年7月24日

 結論から言いますと、「話の場を作る」「農場のメンバーの“聴く”練習」「話し合いの仕方」「外的コントロールをしない」この4つだと思います。

とにかく嫁の不満の第一は「話を聴いてもらってない」のです。
話を聞こうとする態度はさておき、まず「話をする場」がないのです。
「話なら、朝昼晩の飯の時にしている!」と家族の人に言われそうですが、あらためて、「農場の将来をどうするのか」「5年後はどんな農場にするのか」「不満や提案をどのように農場の中で役にたてるのか」などを話すことは、ほとんどありません。
嫁の側も、今まで何回も提案したり不満を言ったりしたのですが、聴いてくれないので「言っても、どうせ無理だ!言ったほうが嫌な思いをするだけなので言わない!」と思って、話をしません。ほとんどの農場で同じことが起こっています。

そんな状況の中でどうするのか、そのひとつが「話の場を作る」です。
理想的には、週に1回、できれば1ケ月に1回でも、農場のみんなが集まって話をする場を持つことです。内容は、仕事のスケジュール調整で結構です。それを何回かするうちに、スケジュール調整は、簡単にできるようになってきます。そして、将来どんな農場にしたいのかをみんなで作り上げるのです。農場長あるいは社長が将来の農場のビジョンを語れることは大事なことです。
「3年後は、受精卵技術によって、和牛の出荷数を50頭に増やす」とか
「頭数は今のままで、乳の加工を初め、アイスクリームやチーズを作り、インターネットで販売する」とか
「将来の、トウモロコシの輸入不足からくる濃厚飼料の高騰に対抗するために、地元の副産物を利用して、濃厚飼料の70%を賄えるようにする」とか
「きれいな農場をつくり、家族や地域の人の憩いの場になるような楽しい農場を作る」そんな将来のビジョンを持つことが大事です。みんなでそれを話し合って、「じゃあそれを3年後に達成するためには、今からどんなスケジュールで農場を管理して運営するのか。その時に必要な技術的な問題はなにか。それをどうクリアしていくのか」を、具体的に考えて仕事に落とし込んでいく作業が大事になります。

でも問題は、「そんな話し合いの場ができるのか」です。
「ミーティングをしよう!」と思っても、今、農場の中心になっている父ちゃんや息子が賛同しなければ、できるはずがありません。

そこで、ぜひ登場してもらいたいのが「第三者」です。
ふだん改まって家族で農場の方針を考えようとしても、なかなかできません。
そこで「第三者」にミーティングの進行をしてもらうのです。
つまり、ファシリテーター(会議の進行役)になってもらうのです。
「第三者」がいれば、ふだん強いことをいう人も少し気を使って、強いことを言いません。よく農場に出入りしている獣医師や普及所員、農協の技術員、薬屋さん、機械屋さんなどにお願いするのです。さらに理想的なのは、普段強いことを言う人(場合によっては父親や息子や母親など)に信頼されている人が「第三者」になるほうがいいでしょう。

可能なら、場所は農場以外でしたほうがいいです。
農場の事務所でやっていると、昼間は結構人が出入りするのです。エサ屋さん、薬屋さん、機械屋さん、役場の人などその度に中断するので話に集中できません。

実は、私も農場でやって、まったく話ができなかった経験があります。
人の出入りが多いし、農場内の人間関係が悪いところでは、いつもの悪い人間関係が強く出ます。農場の中では、日頃の悪い上下関係とか苦手意識とかが、ふだんのまま意識の中に定着しているので、その状態でミーティングを持っても、全くうまくいきませんでした。

年に数回でもいいから、場所を変えて2〜3時間じっくり話し合ってみるのは非常に意味があります。
(つづく(著:山本浩通))

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