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ゲストのコラム
「いい農場の秘密こっそり教えます!23〜@活気のある農場は、農場内が楽しい2〜」

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2007年7月3日

 実際に、こんな仕組みを会社で作って、社内の人間関係が非常にスムーズになったという事例も多くあるようです。人間関係がよくなるだけで、仕事のストレスがなくなり効率がよくなります。
多くの人のストレスは「人間関係」だと言われています。
それは、職場でも家庭でも学校でも同じです。

職場の中に「人間関係」のストレスがなくて楽しいなら、少々仕事がきつくても、給料が安くても、そこで働く人は、「仕事をやめたい」と思うことは少なくなります。

ある看護士さんの例もあります。そこの職場は、3交代で勤務時間も長く、非常に忙しい病院だったのですが、看護士長さんが非常にいい人で、そこのメンバーのまとまりもよく、大変な仕事でしたが充実してみんな仕事に取り組んでいました。ところが異動で看護士長さんが代わり、「外的コントロール」で人を支配しようとする看護士長に代わり、そこの職場は、人間関係がギスギスし、ボロボロになったそうです。そして何人もの人が辞めていきました。
それほど、職場の「人間関係」は、仕事の面白さ、やりがい、効率に関係します。

これは農場でも、まったく同じことで、「感謝の仕組み」は役に立つ仕組みです。

その農場の人間関係を、獣医師がどうのこうのと言ったところで、解決するのは難しいのですが、すくなくとも、私が往診に行ったときには、暗い話はせずに、明るく前向きな話題を出したいものです。
前向きな話題を出すと、「自分の農場も、よくなれるんだ!」 と思えます。
「どうせ、少しがんばったくらいじゃ、成績はあまり変わらないし、まあ、どうにかこれくらいでいいか!」と思うより、いい方向に向かいます。

「ほんのわずかな意識の差が、将来の明暗を大きくわけてしまう。こう考えていくと人を動かすのはそれほど難しいことではない。意識を少しだけ変えることによって当りまえでなかったことを当たり前にして、次からはそれを当たり前にやらせるようにすればよい。必要なのは、その当たり前のことが何かを見つけ、うまく相手に伝える表現力さえ身につければ、必ず人は動かせる」

成績のいい農場と、悪い農場の違いは、わずかな意識の差なのです。やっている作業はほとんど同じで、エサやり、糞尿処理、搾乳、エサつくりなど。ところが同じことをやって結果はかなり違います。その違いを作っているのが「意識の差」なのです。
子牛の寝床の乾き具合、空気の臭い、水の汚れ具合、エサ箱の表面、暑さと寒さの影響、などの少しの違いが見えるか、見えないかの差なのです。その意識の差が仕事の「質と精度」の差になってきて、利益に直結します。

では、それをどうやって見えるようにするのか。これが一番難しいところです。「意識をどうすれば変えられるのか」このひとつの方法が、「便所掃除」なのです。
「汚れたら掃除すればいいや」から「汚さないように使おう」と意識が変われば御の字です。
「悪くなれば直せばいいや」という気持ちから「悪くならないように、いい状態をキープする」そのためには、どこのなにに気をつけなければいけないのかと注意が向いてくれば御の字です。
今まで見えなかった「あたりまえのこと」を見えるようにして、あたりまえにやりさえすれば、確実に成績はあがります。
日本の中で、「優秀な農場」があります。産乳量も多いし、乳質もいいし、利益も多い。
そんな農場に、「なにか魔法の薬をやっているのじゃないですか?いい添加剤があったら教えてください!私もさっそく使いますから!」と言っても、返ってくる返事はだいたい同じです。「そんな魔法の添加剤なんてないよ。ただ、基本を忠実にやっているだけだよ!」と。
結局、それが一番コストがかからないし、成績が上がって儲かるのです。
(つづく (著:山本浩通))

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