永守重信著 「人を動かす人になれ」より
「家族的な雰囲気やアットホームで人間的な温かみがベースになくては、経営などできるはずがない。」
私の顧客の農場でも、同じことが見られます。
農場内の人間関係、多くは夫婦関係、親子関係、嫁姑舅問題ですが、うまくいってないところは、牛の管理どころではありません。
特に夫婦関係が悪いと、うまくいきません。朝に夫婦喧嘩をして仕事をしても、ろくな仕事はできません。これは、どんな家族経営のお店でも共通することです。喧嘩をして、むしゃくしゃした気持ちで仕事をしても、集中できないし、仕事が雑になります。その結果が牛の成績に現れます。
楽しくなければ、基本的な作業なんかできるはずもないからです。
人間関係がまずいと、とにかく目の前の作業をこなすことだけで、手いっぱいで、管理をよくしたりとか、農場の問題を解決したりとか、そんな前向きな気持ちには絶対になりません。「自分のやることだけ、やっていれば、それでいいや!」と思うのが人情です。
まずい人間関係がある農場に、獣医師が往診に行き、技術的な話をすると。「そうですね、それを変えなきゃね!」と農家は言うのですが、農家個人としては
どうにかしたいと思っているのでしょうが、農場として技術的な問題を解決して
成績をよくすることは、なかなか難しいのが現状です。
「活気がある会社は社内が楽しい」
「活気のある農場は、農場内が楽しい」
楽しい農場にする大事な要素は「感謝」です。
農場内のメンバーがお互いに「感謝」があると、まずい人間関係にはなりません。
なんかちょっと、道徳的なお話ですが。
おいおいにして、「感謝」 がないために、ゴタゴタしているのです。
「こんな難儀な仕事をやってくれてありがとう」とか「うちのバカ息子の嫁に来てくれて、それに、2人もかわいい孫を産んでくれて、ありがとう」とか「小さな農場なのに、ここで働いてくれて、ありがとう」とか「農場の経営は大変なのに、従業員の私に給料を払ってくれるし、たのしい農場にしてくれて、ありがとうございます」などと感謝が出てくれば、しめたものです。
「感謝」が「明るい農場」をつくるための重要な要素です。
「感謝」という抽象的なものを、農場の中でどのように「仕組み」にするのか。
たとえば、他の会社でやられていることに、「サンクスカード」があります。
会社の社員がなにか他の社員のためにしてくれたことを、「サンクスカード」という小さな紙に、お礼を書いて相手の机の上に置いておくのです。これを書くことは社長からの命令です。一人一日に何枚と決められています。上司になるほど、多くのカードを出さなければいけません。
たとえば、日頃に会社の中で、「いつもみんなの机を片付けてくれてありがとう」とか「昨日頼んだ用事を済ませてくれてありがとう」とか「忙しい中、自分の仕事を終えて、私の仕事をサポートしてくれて、ありがとう」などです。
また、他には毎回のミーティングのときに、人の悪いことは言わず、いいことを褒めてやる。「○○さん◎◎してくれてありがとう」と全員が全員に言わなければいけないと決めることもできます。そうなると相手のいいところを見つけないと話せないので、相手のいい部分を見ようとします。人間なかなかそれができないのです。相手の悪いところは目に付くのですが、いいところはなかなか目に付きません。意識をしていいところを見ようとしないと見えないのです。
(つづく (著:山本浩通))