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戸田克樹のコラム
第102話「こんなときの血液検査①~食欲がない~」

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2016年9月13日

食欲不振の妊娠牛を診察したときのこと。果たして原因はなんでしょう。
原因を探るために血液検査を実施しましょう!!
結果、好酸球が14%という数字がたたき出されました。(白血球の1種である好酸球がどういうものなのかは戸田コラム74話を参照です。)

好酸球増加があり、食欲不振もあるため肝蛭(寄生虫の1種)の感染が気になるところ。
早速、糞便を持ち帰り、「沈殿法」という糞便検査を用いて肝蛭の虫卵がないかをチェック!
ちなみに肝蛭の虫卵はこんな形をしています。

ん???何かいるぞ???

拡大すると。なんじゃこりゃ。
寄生虫の虫卵にしては中身がないし、泡のようなつぶつぶがいっぱい。
そうなんです。気泡です(笑)。「浮遊法」という別な検査法も試したのですが、結局寄生虫の虫卵は何ら確認されませんでした。好酸球値の増加は寄生虫感染のものではないようです。では、なぜ好酸球の数値が増加しているのでしょう。

診察時に撮影した母牛の様子を改めてよく見てみると、体表にはこんなポツポツがちらほら。

好酸球の増加の原因はこれでしょう!

サシバエに咬まれた跡と思われます。刺された箇所で過剰なアレルギー反応が起き、好酸球が動員されていたことで血液中の好酸球が増加していたのでしょう。
しかし、これでは食欲不振になるなんてとうてい思えません。

ということで、検査結果に立ち返って考えなおしてみましょう。

つづく

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