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ゲストのコラム
「内田千絵の新米日誌その6 「臨床獣医への道 〜直腸検査編〜」」

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2007年5月23日

 直検です。初めて牛の直腸に手を入れたとき(学生の時かな)、全てがヌルヌルしていて、今自分が触っているものが腸なのか、子宮なのか、脂肪なのか、全く分からなかった。
 それから、何回か手を入れられる機会があって、分からないなりにとりあえず手を入れてみて、ぐちゃぐちゃと探りまわし、そのうち、あ〜、もしかしてこれが子宮〜?とか、牛によっては、あっあっあっ、これ卵巣かもって、卵巣も触れることがあって、かなり(飛んで跳ねたいくらい)感動しました。

 しかし、この仕事をするようになったら、1つ1つに感動している場合ではなかった(ひそかに心の中で感動しちゃってますが)。何はともあれ、卵巣が触れなければお話にならないんだと必死に卵巣を探しました。手先にばっかり集中してしまい、顔に糞が飛んでくるのも避けれず、足に肢が飛んでくるのも避けれず。探しすぎて、手袋が赤く染まる(直腸から出血して)ことも少なくなく。どうにかこうにか、だいたいの牛の卵巣が触れるようになって、おぉ〜あった、あった卵巣が〜って、やっぱり感動するのですが、卵巣が触れたら診断しなければなりません。大きいのや小さいの、硬いのやらやわらかいの、ツルツルなのやごつごつしてるの。さぁて、それがいったい何なのか。卵なのか、卵が割れた後に出来る黄体なのか、小さくなっていく黄体なのか、大きくなっていく黄体なのか。何も触れないのか。あ〜、道はまだまだ長い。触っても触っても、よく分からない。やわらかい黄体と卵の区別、硬い卵と黄体の区別。受精適期の推測。そのうち、そのうちと自分を励まし、まだまだ時間がかかるよと励まされ、でも、こんなに分からないと結構落ち込むんですが、、、。

 妊娠鑑定。スリップだそうです、胎膜の。スリップねぇ、スリップ、スリップ。最初は、スリップ以前の問題、子宮を摘むことが難しかった。ヌルヌルした子宮を。牛によっては、お腹の中深くに落ちている子宮。手が届かないよ〜!。頚管をもって手前に引っ張ってくるんだよ、と教えてもらい、引っ張ってみるけど、頚管を離したらまた、ズルって、落ちちゃったよ、、。せっかく持ってきたのに。何とか何とか、子宮が摘めたとしても、スリップの感覚なんて全然分からなかった。どんなのよ〜、スリップって。しかも、やりすぎると流産すると言う話も聞いたことがあったから、それが怖かったり。こんな感じなのかな〜と、恐る恐る半信半疑。何となくはっきり分からない。う〜ん、、う〜ん、、。あるとき、ふと、んんって牛さんがいた、おぉ〜って。これも初めて分かった時の感動は、その日1日が花色でした。あっ、あ〜、スリップだ、本当にプリップしてる(笑)って。でも、1回分かったからといって、次から全てが分かる訳ではなく、、、まだまだ道は続くのです、、。

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