要らないものを捨てるのが「整理」必要なものをすぐに出せるのが「整頓」。
これを、獣医師の診療車について考えてみると。
牛を飼っている農家ならほとんどのところに獣医師がくるはずです。そのとき、獣医師が乗っている車の「かたずき具合」を見てください。私が今まで見てきた獣医師の診療車で、すごく散らかっているのが何台かあります。たぶん、みなさんのところに来る獣医師の車も、かたづいてないかもしれません。
診療車が整理整頓されていないと、どんなことになるでしょう。
まず、使った注射器や薬のビンが散らかっています。
使った薬の紙箱が、雨に濡れてカビが生えています。
乱雑に入れられた薬は、どこの何があるかよくわからず、下の方には、使用期限の切れた薬がカビの生えた箱に入っています。
治療に必要な薬を探そうとしても、車に積んでなく、特に緊急で必要な薬が見つかりません。
使った針も散らかって、新しい針がなかったら古い針を洗って使います。
獣医師が出すゴミは、注射器、針、薬びん、ビニール、補液管など数種類になります。それを分別して、医療廃棄物として出すのが通常の処理です。
それが、使った医療廃棄物も分別してなく、ごちゃ混ぜに入っているようなら、ゴミと薬が混ざっています。こんな状態では、まともな診療つまり「質と精度」が高い診療が、できるはずはありません。
でも、散らかった診療車に乗っている獣医師に聞いてみると、「これで、何十年診療をしてきたけど、別に問題はなかったよ!」と言います。自分の診療の質と精度が、いかに低いかと言っているようなものです。なにしろ、学校を卒業して以来数年あるいは数十年、整理整頓の必要性と意味を教わったことがないからです。こう言う私も、それほど昔からではないので、大きなことは言えないのですが。
「整理整頓ができて初めて標準の作業に取り掛かれる」
これは獣医師でも、同じです。
でも、獣医師は学校でも職場でも、こんなことは習わないのです。
診療車が整理整頓されていない状態は、ちょうど、頭の中が整理整頓されていないのとおもしろいくらいに符号します。
過去の治療経過や症例、治療結果など整理整頓されていなく、ごちゃ混ぜに頭の中にあるという目に見えない事を、診療車を見ることで目に見ることができます。
今度、みなさんの農場にくる獣医師の車をのぞいてください。
獣医師の頭の中が見えますよ。
(つづく)