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ゲストのコラム
「いい農場の秘密こっそり教えます!6〜@なかなか続かない整理整頓を続けるには2〜」

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2007年3月16日

 「普段の小さなミスや失敗を見逃しておくから、やがて致命的な失敗が起こる。だから、ミスは小さいうちに徹底的につぶしておく」

農場での小さなミスといえば、いろいろあります。
繁殖関係では、発情した牛の授精師への連絡忘れ、分娩予定日を過ぎた牛を、分娩舎に入れ忘れ、子牛が死亡する。繁殖検診の実施遅れ。不受胎牛の治療が遅れる。忙しさのため発情発見の手抜き。

飼料関係では、サイレージの密閉のミスで質の悪いサイレージができる。飼料の刈り取り時期の遅れ。飼槽の掃除不足で残ったエサにカビが生えたり、腐ったりする。紙袋飼料を雨に濡らしてカビが生える。

管理関係では、生産記録の記録ミス、牛舎のドアの閉め忘れにより牛が逃走する。牛舎に忘れたフォークで牛が怪我をする。ホワイトボードへの記入忘れによる他の人への伝達ミス。パソコンへの入力忘れ。ミルカーの消毒の不徹底。ライナーゴムの交換時期の忘れ。乳房炎の牛の乳をバルクに混ぜる。病気の牛の獣医師への連絡ミスで処置が遅れる。子牛のミルクの濃度と温度の不正による下痢。子牛の寝床の掃除の不徹底による下痢。
など、小さなミスや失敗がごろごろと転がっています。やがて致命的な失敗が起こるかもしれません。

成績の非常によい農家は、全国にありますが、それらの農家の多くは、別に特別なことをしているのではなく、あたりまえの事の精度と質を上げて、大きな失敗が出る前に、ミスは小さいうちに徹底的につぶしているのです。
 いい例が、乳房炎対策です。よくあることは、薬屋さんが新しい薬を持ってきて、「これをやれば乳房炎はでないし、一発で種がつきますよ。」と売り込みに来ると、「これだけで、成績がよくなれば、しめたのもだ!」と思い、薬に飛びつくのです。ところが効いたか効いてないかよくわからないので、そのうち使わなくなるのです。こんな薬は、30年前より、無数に出てきています。農家も稽古がいかず、一回失敗しても、別の薬が出るとまた飛びついて別の薬を使うのです。
 それよりも、決められた搾乳手順で、ミルカーの調整、消毒、寝床の管理、乳房炎牛の処置など「質と精度」を上げることが、乳房炎対策の基本です。結局、基本に忠実が一番安上がりのようです。
(つづく 著:山本浩通)

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