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桐野有美のコラム
「お産の話−33 「牽引を急いだほうがいいケース」」

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2008年5月21日

 助産にはいるタイミングについては、「お産の話-14、15」で示していますが、そこで仔牛の体勢や母牛の娩出力に問題がある場合以外に、もうひとつ、急いで助産にとりかからなければならないケースがあります。
 それは、まだ仔牛の姿は見えないのに、出血を見た場合です。本来、破水は出血を伴いません。出血するのは、いざ仔牛が外界に出てきて臍帯が切れるとき、そして後産として胎盤が子宮から剥がれるときです。だから、まだ破水するかしないかくらいのときに母牛の外陰部から鮮血が見えるときは、異常だと思ってください。つまり、子宮の中でまだ切れてはいけないものがすでに切れていたり、剥がれてはいけないものがすでに剥がれていたりする可能性があるのです。
 仔牛は、外界に顔を出して初めて肺に空気を吸い込むまでは、臍帯を通じて母体の胎盤から酸素を供給してもらっています。その経路が途絶えるということは、仔牛の生命の危機を示しています。次回は、先月、実際にわたしが遭遇した出血のケースを紹介しようと思います。
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