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蓮沼浩のコラム
「第120話 「白癬雑感 その1」」

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2009年2月5日

 癬菌について色々書いてまいりましたが、ここで小生が非常に大事なものの見方だな〜と感じたことを述べてみたいと思います。たとえば多くの人はこんなものの見方をしていませんか?

曰く、白癬菌は牛さんの病変部にしかいないのじゃ。
曰く、白癬菌は牛さんと牛さんが触れる事により広がっていくのじゃ。

小生も以前はそのような考え方をする獣医さんの一人でした。だから白癬菌に冒された牛さんを見つけるとその牛さんの病変部にばかり目がいってしまい患部に薬を塗ったり消毒薬をぶっかけたりなどなど。確かに上記のようなものの見方は間違ってはいないのですが非常に重要な問題を置き忘れています。それは何回も述べますが、牛舎の中の「鉄」の部分に大量の白癬菌が存在しているということです。小生は鹿大の先生の御指導のもと、牛さんへの治療は一切なく鉄の柵だけ消毒することで白癬が牛群から消失した経験を持っています。もちろん牛さんの栄養状態や様々な要因で結果は異なると思いますがこのような経験からこんな実感を持っています。

「 牛 → 牛 」よりも「 牛 → 鉄 → 牛 」の方が感染拡大する点において問題である。換言すれば「白癬パンデミックの要は牛さんと鉄子さんの肌のふれあいよ、うふっということになります。

もちろん患部に薬を塗ったりすることは感染が広がる前や重症の牛さんにとって非常に重要な処置であります。しかしこのような別の角度からの視点を持つことでさらに一歩進んだ対策が取れるのではないでしょうか。白癬の防除をしながら獣医学だけではなく、人生全般について「ある事柄を様々な視点から捉えていくこと、そしてそのように物事をみようと努力すること」の重要性を再認識する未熟者の小生でありました。

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