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2012年10月29日

 肥育牛は、繁殖牛に比べると圧倒的に寿命が短いですよね。そういう場合、肥育牛としての本分、つまり、「肥育の期間、ちゃんと食欲・増体を保つ」ことができることを最優先させてあげることを考えなければなりません。

 僕が若いころ、手を出さない方がいい症例に挑んで失敗したものをご紹介します。

 最初にお断りしておきますが、僕はかなりしつこく治療する方針です。それでも、手を出したばかりに倍返しのしっぺ返しを喰らったのです。

 この症例は「足が腫れた」という稟告で診療しました。足の腫れにもさまざまな原因があり、肥育牛では第一胃の発酵異常で起こるルーメンアシドーシスで発生する毒素が原因のものも多いのです。
 しかしこの症例は「フレグモーネ」といって、細菌感染で化膿巣が筋肉の隙間に蜂の巣のように細かく入り込んでいるタイプでした。
 普通は抗生物質とデキサメサゾンなどの治療で治癒するのですが、この子の場合は「やっと治った」と思って放置すると、1ヶ月位で再発して、しかも倍ひどくなっている。
 そこで、再度以前よりしつこく治療するのですが、「今度こそ完治した」と思っていると、またまた1ヶ月位でいっそうひどい状態で再診依頼が来る、という状況でした。数ヶ月にわたって何クールかの治療をした結果が下のものです。あーあ、やめとけばよかった(涙)

 世の中には、肥育牛の本質に関係なければ放っておいた方がよい症例もあるんです。

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