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池田哲平のコラム
尿石症を考える(17)

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2012年10月26日

 アンモニアが水に溶けると、その水のpHは上がります。つまりはアルカリ性になるという事ですね。これは尿でも同じことが言えます。尿のpHはアンモニアの溶ける量が多くなるに従って上がっていきます。
肥育牛の場合、アンモニアの量が少ない時は、pHは中性付近にとどまります。しかし、前回お話ししたようにDIPとNFCのバランスが崩れてしまった場合などでは、尿中のアンモニアの量が増えてしまい、尿のpHは上がってアルカリ性になります。

 前置きが長くなりましたが、この「尿のpHが上がってアルカリ性になる」というのが、肥育牛の尿石症を引き起こす引き金になるのです。

 尿中にはアンモニア以外にも多くの成分が存在しているのですが、それらは尿が中性付近にいる時であれば尿の中によく溶けています。しかし、尿のpHが上がってアルカリ性になると、そのうちいくつかの成分は溶けておく事が出来なくなり、結晶として目に見える形であふれ出してきます。最初は小さい小さい結晶でも、結晶がくっつきやすい小さなかけらの様なもの(多くの場合は膀胱などで剥がれ落ちた粘膜の上皮)があると、それを核にしてどんどん他の結晶もくっついてきて大きくなっていきます。

 こうして尿結石が出来上がってしまうのです。

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