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池田哲平のコラム
尿石症を考える(16)

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2012年10月19日

 肥育牛で尿石症ができるメカニズムの一つには、反芻動物の特徴的な蛋白質の利用方法が関係しています。牛さんを始めとした反芻動物では、食餌から得た蛋白質の一部(分解性蛋白質:DIPと言う)はルーメン内の微生物によってアンモニアにまで分解され、そのアンモニアはルーメン内微生物の増殖に利用されて微生物蛋白質となり、第四胃以降の消化管で消化・吸収されます。
(※微生物利用されない蛋白質は非分解性蛋白質:UIPと言う)
 この時、アンモニアを蛋白質に合成するためにはエネルギーが必要ですし、蛋白質に合成するにはアンモニア以外の材料も必要です。この両方の役割を果たしてくれるのがトウモロコシや麦といった穀類中のデンプンや糖類です。デンプンや糖類などは非繊維性炭水化物:NFCと呼ばれます。

 DIPとNFCのバランスが取れている時は、牛さんは効率よくアンモニアを利用して微生物蛋白質を合成します。しかし、DIPが多くなったり、逆にNFCが少なくなったりして、DIPとNFCのバランスが崩れてしまうと、微生物蛋白質に合成できないアンモニアが増えてしまいます。

 あふれてしまったアンモニアは生体にとって猛毒なので、どうにかして体の外に出す必要があります。そのメインとなるのが尿として排泄するルートです。簡単に言うと、おしっこの中にアンモニアを溶かして体の外に出すのです。が、このアンモニアの処理方法が尿石症を引き起こす原因にもなっているのです。

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