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池田哲平のコラム
尿石症を考える(18)

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2012年11月2日

 以上のように、肥育牛の尿石症は高蛋白質な飼料の給与が背景にあって、その蛋白質の利用過程に無理が生じ、アンモニアが上手く利用できなくなったときに発生しやすいです。

 また、食餌性の要因として他にも、ビタミンAが少ない事や冬場の飲水量の低下も挙げられます。

 ビタミンAに関して、その働きの一つに「皮膚や粘膜などの上皮組織を丈夫に保つ」というものが挙げられます。肥育牛では脂肪交雑をあげる為にビタミンAの給与は制限されているのがほとんどだと思います。そうなると、牛さんの体の中ではビタミンAが不足状態になり、上皮組織が健康な状態に保てなくなります。すると、膀胱などの粘膜は剥がれやすくなり、剥がれ落ちた粘膜上皮は尿結石の結晶がくっつくための核になります。核が多いほど結石は出来やすいので、結果的に、ビタミンAの不足によって尿結石が出来易くなるのです。

 また、飲水に関しては、飲む水の量が少ないと当然尿の量も少なくなります。しかし、尿となる水の量は少なくても毎日体の外に出すべき不純物の量と言うのはさほど変わらないので、同じ量の尿では普段よりも濃くなります。すると、水分量が十分なときは尿中に溶けられていた成分も、水分量が少なくなってくると尿中に溶ける事が出来ずに結晶化してきます。つまり、冬場の寒冷期で飲水量が減ったり、何かしらの原因で水が十分に飲めない時などは、尿石症になるリスクが高くなります。

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