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池田哲平のコラム
尿石症を考える(19)

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2012年11月9日

 肥育牛の尿石症は肥育牛特有の食餌を背景に起こります。しかし、同じ餌を食べていても尿石症になる牛とならない牛がいるのは、それぞれの牛の体内での“代謝”が違うからです。

 例えば、長く風邪にかかってしまい最悪肺炎になってしまった牛さんでは、健康な牛さんに比べて病気と闘うためにエネルギー消費が増えます。すると、ルーメン内での微生物蛋白質の合成に回す分のエネルギーが不足してアンモニア過剰になる、もしくは、不足するエネルギーを補うために筋肉を分解してエネルギー源にした結果、エネルギーとして使えないアンモニアが体内で増える、という事が牛さんの体内で起こっていると私は考えています。増えたアンモニアは、前回までのコラムで紹介した様なストーリーで尿石症を引き起こす原因になります。また、この様な牛さんではビタミンAの消費も加速します。

 これまでに診てきた尿石症に罹っている牛さんは、発育が良くない子が多く、特に毛艶が悪く毛がボサボサになっている子は重症であるイメージです。過去に病歴があって長く治療したような牛さんは、その一定期間、体内のエネルギーと蛋白質(アンモニア)の代謝に変化が起こります。その時に小さいながら尿結石が出来てしまったり、最悪、腎臓に障害が残ってしまえば、それが肥育が進むにつれて悪化してくる事は十分に考えられます。

 この様な代謝性の原因もコントロールしていかなければ、尿石症の予防や治療は出来ない事もあります。

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