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松本大策のコラム
「肺炎の防除のお話11 肺炎の後始末その1」

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2007年2月1日

 肺炎がよくなっても、なかなか発育や増体が回復しない牛さんがいます。1つは、肺の炎症が回復しきっていない場合、もう一つは“生体内酸化亢進”のケース。はじめのヤツは解りますよね。でもけっこう中途で放置されている肺炎を見かけます。たとえば、農家さんは獣医さんが明日も来ますと言わなかったので、1回で治療は終わりだと思っていた、でも獣医さんは獣医さんで、農家さんが翌日電話してこなかったのでもう治ったのだと思いこんでいた、というケースがあります。獣医さんは、「押し売りになるから」と遠慮している場合もあるので、農家さんの方から「明日も治療が必要ですか?」って念を押しておいた方がよいと思います。そうすれば、お互いの遠慮や誤解で牛さんが放置されることはなくなります。
 さてもう一つのケース、“生体内酸化亢進”とはどういうものでしょう?簡単に言うと「身体がさび付いてくる」ということです。どうしてそうなるのかお話ししましょう。体の中には、外部から入ってきたばい菌をやっつけてくれる白血球という細胞があります。白血球にも、ばい菌を食べてしまうもの(好中球など)、免疫抗体を作ってばい菌をやっつけるもの(リンパ球)など、いろいろな種類があるのですが、毒ガスをまいてばい菌をやっつける白血球もあります。この毒ガスは、一酸化窒素とか活性酸素といって、相手をさび付かせる(酸化物質)ものなのです。
 さて、この毒ガスがばい菌だけをターゲットにしてくれたら問題はないのですが、戦争で使う毒ガス平気とおんなじで、敵味方おかまいなしに攻撃してしまいますから、味方(白血球)のまいた毒ガスで、自分自身(つまり肺とか全身のいろんな細胞)までが傷ついてしまいます。こうして炎症はかえってひどくなってしまうのです。ばい菌をやっつける分には有効な武器なんですけどね...。

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