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松本大策のコラム
「肺炎の防除のお話12 肺炎の後始末その2」

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2007年2月3日

 さて、そうはいってもまき散らしてしまったものは嘆いても仕方ありません。前向きに対策を考えましょう。解毒剤を使えばいいんです。それが“抗酸化剤”といわれるもので、使いやすいのはビタミンEが代表的なものです。僕は、肺炎が数日続いた牛さんには、ビタミンE注10ml+パンカル注10mlを筋肉注射してあげることが多いです。14ヶ月齢未満でしたら、フォルテ(ビタミンADE剤:50万単位/mlのビタミンAを含む)を2ml加えます。これで、肺炎が治ったあとの回復がとてもよくなります。
 でも、重度の肺炎をやらかした牛さんでは、これだけでは不十分です。というのも、ビタミンEだけでは、なかなか全身のいろいろな部分の解毒をまかなえません。ビタミンEは、脂溶性物質ですから細胞の膜(リン脂質という油性の物質でできています)には効果的に働けても、細胞内や細胞と細胞の間(間質といいます)は水溶性の方が働きやすいのです。水溶性の抗酸化物質としては、注射ではチオクト酸注(今はなき「発掘あるある大辞典」で有名になったαリポ酸の注射です。牛さん用で売っています)やビタミンCがありますが、僕がよく使うのは、エムリング(万田酵素の牛さん用)です。抗酸化酵素のSODやカタラーゼなどを豊富に含んでいるので、肺炎後の増体不良などが大変よく改善します。だいたい20〜25gを10〜20日間飼料添加します。量も投与期間もいい加減な書き方ですが、牛さんの状態で増減すればいいと思っています。これまでに多くの肺炎後遺症の牛さんで効果を上げてきましたから、肺炎で困っている方は、だまされたつもりでやってみてください。でも、あくまでも肺炎は「予防第一」ということは肝に銘じておきましょうね。
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