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池田哲平のコラム
「牛の解剖81:肝臓(5) ~胆汁の色~」

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2011年8月26日

 胆汁はこの様にして、食物中の脂肪の消化に重要な役割を果たしているのです。
 胆汁はその中に色々な成分を含んでいるのですが、その中には消化に関わらない成分もあります。それは胆汁色素と呼ばれるもので、その名の通り、胆汁の色を決定している成分です。濃い緑色をしたビリルビンという名前の色素で、これが消化管に流れていくことで便の色を決定しているのです。「えっ?でもウシの便って緑色じゃないじゃん!?」と思われた方もいるかと思います。その通り!皆さんご存知の通り、ウシの便は黄土色とか山吹色とか黄褐色と言った様に表現される色ですが、決して濃い緑色ではないですね。実は、このビリルビンは腸管を流れていくうちに色が変化するのです。この色の変化は腸内細菌によって引き起こされるものなのですが、これは腸内細菌叢の性状(善玉菌・悪玉菌と呼ばれる細菌群のバランスやその種類)によって大きく変化します。反芻動物であるウシと肉食動物であるイヌでは腸内細菌叢の性状が違うので、肝臓から分泌される胆汁の色は最初同じでも、便として出てくるときには動物種ごとに違った色に見えますし、同じ個体でも各種の疾患で腸内細菌叢の性状が変化したときなどは、ビリルビンの色の変化に違いが見られます。

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