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池田哲平のコラム
「牛の解剖55: 第三胃(1) ~水分を絞り取る~」

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2010年10月1日

 第二胃からやや右後ろの方向に進むと、第三胃があります。第三胃は球に近いくらい真ん丸な形をしていて、第一・二胃や第四胃よりも触った感じが硬いのが特徴です。第三胃は別名“葉胃(or葉状胃)”とか“重弁胃”と言うことから想像できる通り、その内膜面は葉っぱや弁の様な形をしたヒダに覆われています。これを第三胃葉といいます。第三胃葉は三日月の様な形をしていて、その表面には第二胃で見られた様な小さな突起物(乳頭)がたくさんあります。
 じゃぁ第三胃のこの小さな突起も第一胃・第二胃にあったのと同じように、胃粘膜の表面積を拡大して、VFAの吸収効率を上げるためのものなのかと言うと、実はそうではないんです。表面積を広げる効果は結果的にあるかもしれませんが、メインの役割は、消化物の誘導です。第三胃の大きな役割はVFAの吸収ではなく、消化物から水分を絞り出して吸収することで、これはそれぞれの第三胃葉の隙間で行われます。第三胃葉上の突起は、消化物をその隙間に送り込み易くする効果があると考えられています。水分を絞り取られた消化物は当然硬くなるので、これによって、第三胃は他の胃よりも硬い感じがするのです。

 ちなみに、第三胃は食肉としては「センマイ」と呼ばれますが、第三胃葉は千枚もありません。実際は百枚くらいしかありません!

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