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池田哲平のコラム
「牛の解剖51: 第二胃(2) ~第二胃溝反射~」

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2010年9月3日

 食道出口の直下に第二胃があって、その後ろに第一胃がある最大のメリットは、第一胃のバイパスです。ウシは第一胃に入れたくないものや、第一胃に入るよりも第二胃以下の消化管に早く入った方がいいものを、食道から第二胃を経由してそれ以降の消化管に送ります。これはウシが意識してそうしているのではなく、反射やホルモンによる作用が関係しています。
 最もよく知られているのは第二胃溝反射というものです。ウシを始めとした反芻獣の第二胃には“第二胃溝”という、食道出口から第三胃へと続くはっきりとした溝状の構造があります。これは赤ちゃん時期のまだ哺乳しているウシにおいて非常に重要な役割を果たします。仔牛が母牛や哺乳瓶から哺乳する時には「いまからミルクを飲むんだ!」という意識が生まれ、この哺乳行動そのものが脳への刺激となります。この刺激によって、第二胃では、溝状だった第二胃溝は左右の溝の壁が筒状に丸くくっついて一本の管状になります。これによって口から入ったミルクは第一胃に入ることはなく、第三胃へと送られ、さらに第四胃で消化を受けます。
 第一胃にミルクが入ってしまうと、微生物によるミルクの異常発酵が起こってしまいます。第二胃溝反射は、この異常発酵を防ぐために第一胃をバイパスするというすばらしい仕組みなのです。
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