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池田哲平のコラム
牛の解剖20: 肺(6) ~「病原体vsウシ防衛軍」の戦場~

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2009年12月5日

 ブドウの実こと肺胞に炎症の中心がある“肺胞性肺炎”と、ブドウの皮こと肺胞壁に炎症の中心がある“間質性肺炎”。顕微鏡で肺を見たときにこのような違いが見られる原因というのは、肺炎を引き起こす病原微生物の種類の違いによるのです。
 皆さんがよく聞く「細菌」と「ウイルス」を例に挙げて結論を先に言いますと、細菌感染では肺胞性肺炎に、ウイルス感染では間質性肺炎になります(例外も一部あります)。何故か?これは、多くの細菌が細胞の表面に感染して増えて病原性を示すのに対して、ウイルスというのは細胞の中にまで入り込みそこで増殖して病原性を発揮するという違いによるためです。
 つまり、肺胞の壁にくっついた細菌をやっつけるために、肺胞の中に防衛軍である白血球がやってきて、肺胞の中で「細菌vs白血球」の戦いが起こるので、細菌感染では肺胞性肺炎になるのです。一方、ウイルスは肺胞壁を構成している細胞そのものに感染するので、この細胞の中に防衛軍もやってきます。このため戦いの場は肺胞の壁の中ということになり、間質性肺炎が起こります。

 ですが、実際の臨床現場では、ウイルス感染が先に起こり二次的に細菌が感染するということが多いので、肺胞性肺炎と間質性肺炎の両方が混在して見えることが多いようです。

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