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池田哲平のコラム
牛の解剖21: 肺(7) ~呼吸のリズムを作るのは?~

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2009年12月12日

 肺炎などの呼吸器疾患になると、動物は呼吸するのが苦しくなりますね。鼻腔や気管といった空気の通り道が狭くなるため、ガス交換を行う肺胞が炎症を起こし機能しないため、など原因は様々ですが、動物は必死に生きようと呼吸が速くなったり深くなったりします。
 じゃぁ呼吸が速くなるといったような呼吸のリズムは、一体、体のどこが調節しているのでしょうか?
 それは脳です。脳の中でも首に近い部分の“延髄”という部分です。格闘技の技で「延髄蹴り」というのがありますが、その延髄です。ここに呼吸中枢と言われる場所があって、呼吸の速さや深さを調節しているんです。
 じゃぁ肺は何もしないのか?というと、そうでもありません。呼吸中枢はあくまで呼吸のリズムを作る、いわば“司令部”です。そこにデータを送る“情報部”がなければうまく機能しません。肺にはその情報部の一角があります。どういう情報かと言うと、「肺が膨らみすぎてますよー!!」という叫びをうったえるのです。つまり、「空気を吸うのをやめさせる」という、一見、肺の呼吸器としての役割に反するような情報を司令部に伝えているんです。
 その反対に、空気を吸うことに関係する情報を送っているのは、実は血管なんです。心臓から最初に伸びる「大動脈」と首にある「総頸動脈」の二か所には、血液中の酸素と二酸化炭素の濃度を測って中枢に情報を送る、いわば“ガス探知機”の様なものがくっついているのです。空気を吸わなくて血液中の酸素が少なくなると、このガス探知機が警報を鳴らし、「早く空気吸えっ!!」と司令部を叱り倒すのです。
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