(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第214話「ハッチの床材③」

コラム一覧に戻る

2018年12月12日

個人的にはイナワラを敷いた床が結構好きです。なによりフカフカで香りがいい。本来は牛さんが好んで食べるものでもあるので、それに囲まれて嫌な気分になる牛はいないだろう、という主観ももちろんあります(笑)。母牛の重要なエサになるものですから、子牛のベッドにするのには抵抗がある方も少なくありません。ハッチ床に使うなら母牛のエサとして使いたい、という気持ちになるのはもっともです。

ただ、積極的にワラを敷くようお願いするケースがあります。
生まれたあとに臍がほとんどない、あるいは臍が太すぎる、という子牛に遭遇した場合です。
分娩後にきちんと閉じた臍は周囲にいる病原体が腹腔内に侵入するのを防ぐ「フタ」の役割を担ってくれます。この「フタ」がないと、感染のリスクが大きくなってしまいます。

おがくず床の場合、極端な話ですが、細かい粒子が臍穴から侵入する危険性があります。また、十分に乾いていないおがくずには「目に見えない雑菌」が大量に潜伏していることがあります。免疫機能の未熟な子牛を病原体の海に放り出すことになりかねません。「ちょっとしっとりしているな」と感じたら、それはもう危険なおがくずです。臍からの感染は血液に乗って全身に菌が飛んでしまう危険も高いですので十分な注意が必要ですね。

輸入ワラであれば一度は加熱・乾燥処理をされています。また、自家産のワラでも十分な乾燥と適切な保管さえされていれば衛生状態はクリアです。臍に不安のある子牛のハッチではワラを敷いてもらうことで感染を防ごう、というわけです。

|