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笹崎直哉のコラム
ルーメンについて考える その7

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2018年11月27日

 今回は「反芻」について考えていきます。

 反芻とは、一度食べてしまった飼料を吐き戻して、もう一度噛みなおす(咀嚼)する行動を指します。反芻は早くて生後1~2週間ではじまるようです。疑似反芻をいった不規則な反芻からスタートするようです。案外早いものですね。そこで反芻には重要なことが3つあります。1つ目は植物繊維を砕きルーメン微生物が利用しやすい形にすること。2つ目は反芻で唾液分泌が促進することです。牛さんの唾液成分には重炭酸塩(NaHCO3)が多く含まれているのでアルカリ性なのです。pHでいうとおおよそ8~9になります。どうしてもルーメン発酵によってpHの酸性化につながってしまうのですが、唾液が混入することで、これを中和し良い環境を促してくれるのです。

 反芻時間に関しては意外と単純な仕組みになっています。牛さんが摂取した飼料の繊維の量に依存します。粗飼料の摂取量が増えれば増えただけ長くなりますから、濃厚飼料を増やしていけば反芻時間は減ります。3つ目は反芻は牛さんが快適に過ごしているかどうかの指標になります。実は牛さんが何かに驚いているとき、体調が悪いときなんかは反芻を行っていません。牛さんが床に寝そべって、まぶたを半開きにし、ぼんやり反芻をしているときはリラックス状態であると判断できます。実体験でいうと広い部屋で床替えをしたばかりのふわふわな敷料で休んでいる牛さんたちはこんな表情をしていました。やっぱり床って大事ですね。なんだか見ているこっちも幸せな気持ちになってしまいそうでした。牛さんの反芻行動を観察するだけでも、部屋の環境は快適か、繊維をしっかりと摂取できているかなどの健康状態を知る手掛かりになるのです。

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