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笹崎直哉のコラム
ルーメンについて考える その8

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2018年12月4日

 牛さんで血液検査など肝臓を傷めているのが発覚した際は、まずルーメン内の環境がおかしくなっていないかどうか疑ってみてください。意識していないうちに濃厚飼料を多く給与していたり、慢性的に粗飼料が不足していると、ルーメンパラケラトーシスを招いてしまいます。これは第一胃粘膜が弱り、角化不全を起こしている状態でルーメン粘膜の抵抗力が大きく低下している状態です。

 こんなときは飼料やそれ以外の異物の刺激で粘膜が壊れて炎症を引き起こしてしまいます。ここから持ち直して、しっかりと回復してくれればよいのですが、消化管に常に居座っている壊死桿菌と呼ばれる細菌が傷を負った粘膜から侵入しまうケースがあるのですが、、、ここから悪循環のはじまりです。

 壊死桿菌は血管内に入り込み、門脈を経て行き着く先が肝臓です。肝臓の所々に住み着いた壊死桿菌はそれぞれの住み家で膿瘍形成し、肝膿瘍を導いてしまいます。肝臓はほかの臓器と異なる独特の血液循環系をもっているほど代謝が盛んなので、肝臓から派生してほかの臓器にまで悪影響を及ぼしてしまい、取り返しのつかないことになってしまいます。

 肝臓に負担がかかっているときは、下痢をしたり目が窪んで脱水したり等のサインが出てきますので、そのときは「ルーメン大丈夫かな?エサのあげ方や量を大丈夫かな?」と意識してみてください。まずは獣医さんに診察をお願いして、対応してもらいましょう。もちろん濃厚飼料を減らして良質な乾草、稲わらを十分量給する等の対策もよいですね。

つづく

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