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伏見康生のコラム
「NO.26: 「中耳炎とその治療(13)」 」

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2009年2月7日

治療3 外耳炎 其の三
(2)耳道薬注・洗浄
 耳のお掃除が終わったら次は耳道に詰まった膿を積極的に除去するために耳道薬注と洗浄を行います。このように書くとものものしい感じですが、処置はそんなに大変なものではありません。
 まず獣医さんに頼んで10ml注射器に薬液を作ってもらいます。数日分もらっておくといいと思います。薬液は生理食塩水に抗生物質を少し入れて作ります。抗生物質はOTCなどを1mlも入れれば十分です。また抗生物質無しの生理食塩水だけでもよいと考えています。
 薬液を準備したら牛を捕まえ、柵に結びます。外耳炎を起こしている側の耳をつかみ上に持ち上げ、注射器(もちろん針なし)を耳に入れ、おおよそ耳道の入り口あたりに向けて5mlくらいの薬液をたらします。注射器を抜き、そのままの状態で耳根部(耳の付け根)を10秒くらいよ〜くもみます。これで薬液は充分耳の奥まで入っていきます。後はロープを緩めるor牛を放してあげるとブンブンっと頭を振り、詰まった膿を飛ばしてくれます。すばやく逃げましょう(笑)。数回、数日これを繰り返してあげると膿や汁が出なくなります。これでバッチリです!!

余談:どうしたら効果的に耳道を洗浄できるだろうかと、これまで、静脈注射時に用いるようなチューブや留置針の外套など、数種類の武器(?)を用いて耳道深部への注入や吸引による洗浄をおこなってきました。時には農家さんの開発した(驚!!)アスピレーターを用いて吸引をしたこともありました。それらの経験からお話させていただきますと、柔らかいチューブを用いた深部への注入は、特に悪いということはありませんが、明瞭な効果が得られた感じもありません。そのわりには、異物の侵入に牛は嫌がり激しく抵抗するためかなり処置にてこずります。また、留置針の外套やシース管などの硬いチューブの場合は、鼓膜破砕には有効ですが耳道を傷つけやすく、かえって外耳炎を悪化させてしまうこともあるので気を付けましょう。吸引は膿の除去という点ではとても有効と思われますが、やはり処置に苦労します。実際、前述の方法で十分な効果を実感しており、現在はこの方法に落ち着いています。

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