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笹崎直哉のコラム
しっかりと初乳を飲んでいても その2

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2018年3月20日

 受動免疫移行不全はFTP(Failure of passive transfer)とも呼ばれ、ちゃんと子牛が産まれて適切な時間に充分な初乳を飲めていても血中に反映されない、つまり吸収できていないことを指します。実際に出生から2週間以内に死亡した虚弱子牛の血液と、治療せず元気に育ってくれた子牛の血液を比べた農場があります。すると明らかに前者の方がお母さん由来の初乳を飲めていない、または吸収できていないために血液中のIgGとγGTP(初乳を飲んでいるかの指標になる)濃度が低値を示していました。

 さらに出生後の死亡事故が多い農場と少ない農場で初乳製剤の給与量と給与時間を統一してその後の血液中IgG濃度を比較すると、やはり事故多発農場では有意な低値を示すことがわかっています。

 なぜこのような違いが出てしまうか原因を探ってみると、事故多発農場では分娩前のお母さん牛が低栄養状態(給与飼料不足)に陥っていることがわかりました。また舌遊びが特徴的な空腹ストレスが出ており、床がコンクリートむき出しで硬かったり、お母さんの牛の体が糞尿で濡れていたりといった衛生状態も悪くなっているということも判明しています。さらにそのようなお母さん牛は胎盤の機能も低下しているとの報告もあります。

 やっぱりお母さんの管理は非常に重要ですね。今回のコラムで「元気な子牛なら元気なお母さん」という考え方よりも、「元気なお母さんなら元気な子牛」というイメージが強くなった笹崎でした。

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