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松本大策のコラム
雌なのに...(尿膜管遺残のお話し)

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2017年6月26日

 みなさん、『へその緒』ってご存じですよね?でも、その中身ってなんだか分かりますか?「胎盤を通じてお母さんから胎児に栄養や酸素を送ったり、胎児の老廃物や二酸化炭素をお母さんへ戻したりする血管じゃないの?」と答えたあなた、スルドイ!その答えにあるとおり、臍動脈と臍静脈という2本の血管が通っています。
 しかし残念!それでは2/3正解です。じつは、へその緒(臍帯:さいたい、といいます)の中には3本の管が通っているのです。そのうち1つは、先にお話しした「胎盤を通じてお母さんから栄養や酸素を胎児に送る『臍動脈』」で、もう一つが「胎児の老廃物や二酸化炭素を胎盤を通じてお母さんに返す『臍静脈』」です。では、もう一本の管は何でしょう?それが今回のテーマ『尿膜管』です。これはどういうものか、簡単にいうと、おなかの赤ちゃんのオシッコを『尿膜(一次破水の袋です)』に溜めておくために、赤ちゃんの膀胱から尿膜までをつなぐ管です。

 これら3本の管とも、赤ちゃんが生まれると同時につぶれて、というか、ひしゃげて、というか、とにかくペッタンコにくっついて管ではなくなります。そうでないと、へその緒から出血が止まらなかったりバイ菌が入ったりして赤ちゃんが危険ですからね。こうして「きしめん」みたいになった元3本の管は、それぞれ肝円索とか膀胱円索と言います。
 しかし、残念なことに、その管が閉鎖せずに残っちゃうことがあるのです。出血があると分かりやすいので、獣医さんはへその緒を縫合糸で縛ってくれて、バイ菌が入らないように抗生物質を打ってくれたりします。でも、尿膜管が残ってしまった場合、タイミングよくオシッコでもしてくれない場合、見落とされてしまい、そこからバイ菌が入る、ということがあるのです。これが『尿膜管遺残』です。発熱を繰り返す、という子牛のおへそを見てみたら、雌なのに雄のオチンチンのところ(正確にはおへそなのですが)からオシッコをした、とか膿が付着していて、おなかを押さえるとおへそから膿がたくさん出てきた、なんて言うことで見つかることがあります。見つけたらオペした方がよい場合が多いですから獣医さんに見てもらいましょう。

 見落とすと、尿膜肝炎から膀胱炎に感染が広がり、腹膜炎にまで至るケースもあります。ここまで来ると治るものではないので、みなさん、子牛が生まれたらおへその消毒と、尿膜管遺残がないかのチェックは怠らないようにしましょうね。

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