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笹崎直哉のコラム
子牛の哺乳時で何に気をつけていますか?その10

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2017年2月20日

 皆様お疲れ様です。突然ですが、先週の2月14、15日は獣医師国家試験がありました。早いもので私が試験を受けてからもう一年が経過するところです( ゚Д゚)。当時私は本番直前に試験官が一番前の列で、問題や解答用紙を仕分けているときが、緊張のピークを迎えているときでした。今でも忘れられません。しかし大学と研究室の先輩でもある椎葉獣医師が本番の朝に「落ち着いて頑張ってね( ^^) 」というメールをくれたのでそれをもう一度読み直し試験に臨みました。本当に有難かったです(´;ω;`)。毎年約1,000人の獣医さんが誕生するわけですが、これまた試験の出題範囲が広くなったり、難易度が上がったりとなかなか大変なのです。今年は一人でも多くの方が合格し、鹿児島県でお勤めする獣医さんが増えてくれたらいいな、と密かに思っています。

 さて前回は哺乳速度に関して話を進めていきましたが以下のメリット3点をさらに詳しく紹介させていただきます。
 ①流入速度がゆっくりだと、消化酵素の分泌が間に合い、消化、吸収の機構を十分に働かせることができる。
 ミルクが第四胃に入るとタンパク分解酵素のレンニンが分泌し、ミルクを固めてカードを形成しゆっくりと小腸へと流れるといった過程を担うわけですが、一度の大量に分泌されるものではないため、ミルクが一気流入しても残念ながら対応できません。また脂肪分解酵素が有効に働くためには唾液が充分に分泌されることが重要であるため哺乳速度はゆっくりの方が良いと考えます。そうすると消化不良性下痢(食べ過ぎ、飲みすぎによる下痢)の発生原因の一つに哺乳速度が関係しているようにも思われますね。

 ②ゆっくり飲むことで、ミルクの誤嚥を防ぎ子牛時期の呼吸器病のリスクを減らすことができる。
 やはり哺乳速度は気管にミルクが流入するリスクを高めてしまいます。またバケツでミルクをあげる場合、子牛は哺乳時やや興奮しているときがありますので「鼻の穴でミルクを吸ってしまうことで気管に入る」ことが心配です。

 ③第二胃溝反射が十分に働くことで、ミルクが第一胃に漏れ出て異常発酵を起こさないようにできる。 
 実は哺乳期間でも第一胃は発達できていない未熟な細菌の住み家を形成しており、ミルクが第一胃に入ってしまうと異常発酵が起きてしまいます。ここで第二胃溝反射はそれを防ぎ直接第四胃にミルクを運んでくれるわけですが、やはり哺乳速度の影響を受けてしまいます。

 最後に以外にも哺乳速度をゆっくりにすることで子牛が「あーあ、ミルク飲み足りないなー」という空腹感を与えないのではないかとも思います。はやり哺乳期はどうしてもミルクが主体の食生活なので丁寧に哺乳してあげて、子牛に満足感を与えてあげたいものですね。

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