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笹崎直哉のコラム
戸田獣医師からの助け舟~Sound of O・NA・KA~

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2017年2月28日

  皆様お疲れ様です。獣医師になってからもうすぐ1年になるところですが、診療の基本的な視診、望診、触診、聴診から始まり診断名をつけて治療に進んでいく大まかなスタイルを日々続けることでなんとか診療にも自信がつき、ステップアップしているように感じます。しかし、、、聴診の分野はかなり苦労しました( ;∀;)。聴診で実際に聞こえる音が牛さんの体の中で「実際にどうなってるの!?」とどうしても頭の中でイメージできず、どのように紐解いて理解すればよいか悩んでおりました。

 具体例を挙げると牛さんの右腹部にある「膁部」と呼ばれるところやその周辺(右側腹壁)において

 小腸や盲腸、稀に第四胃に関わる疾患を発症している牛さんで聴取可能な「拍水音」すなわち「ポチャポチャ音」、続いて「鼓音」つまり「ボンボン」という低音、そして「有響性金属音(Ping音)」いわば「キンキン」、「カンカン」という高音が存在するのですが、実際に牛さんの体の中で腸管や胃の中がどうなっているのかが、当時はわからなかったのです( ;∀;)。

 そしてついに戸田獣医師がアドバイス、、、いわば助け船をだしてくださり、私は藁をもすがる思いで乗船しました。戸田獣医師、、、いわば「説明、解説のプロフェッショナル」。
いつも診療後の事務所では盛り上げ隊長かのごとくユニークな話をして下さいます。今回のケースでも非常に有意義な説明を頂戴しましたので紹介させていただきます。

まず拍水音とは・・・右腹部に聴診器の先端(チェストピース)をあてながら、「腹部を揺らしながら聞く」ことで聞こえる音なのですが。これは腸管内にガスと腸内容物が混在している場合に聴取されるのです。ペットボトルで例えてみると以下のようになります。

健康な牛さんでは腸管内にガスが溜まることはあまり考えられず、発生したガスは腸の運動によって肛門を介して、排出されます。よって腸管内のガスの貯留は考えられません。

つまり拍水音は何らかの異常発酵でガスが沢山お腹の中で産生されてしまった、腸管が捻じれたり、腸内容物が詰まったりしてガスが通過しないことで聞こえる異常音であると考えられます。

つづく

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