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ゲストのコラム
秘境の郷の牛飼いだより ~第2回~

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2016年9月24日

② 畜魂供養祭

 椎葉村は日本の三大秘境だと言いましたが、日本の三大秘境を皆さんは知っていますか?
 ひとつは、岐阜県の豪雪地帯である「白川郷」です。独特の合掌造りは有名で世界遺産にもなっているのでよく知っていると思います。なんとこの合掌造りには「夜這い」専用の入り口があったそうですよ・・・(なんと羨ましい、笑い)

 もう一カ所は、四国徳島県の「祖谷」です。ここは椎葉と同じく平家の落人の里として有名で、源氏が攻めてきた時に、かずら橋を切って落として対抗したと言われています。そのかずら橋は素晴らしいものです。平家落人の里と言うことで、かつては椎葉と姉妹村でしたが、今は合併して三好市となり、残念ですが姉妹村としての交流は無くなりました。

 椎葉村には合掌造りもかずら橋もありませんが、源氏と平家の悲恋物語があります。その物語の舞台となったのが、国指定重要文化財に指定されている鶴富屋敷です。悲恋物語は次の機会に紹介します。
 
 
 椎葉村では和牛改良組合が主催して年に一回、畜魂供養祭を行っており、今年も8月30日に椎葉村家畜管理センターに建立してある畜魂供養碑の前で行われました。
 私は牛飼いをしながら役場に勤務し、地元の小さな神社の神主もしていますので、この供養祭の神事も務めます。

 神事の時には、いつも話すことがいくつかあります。

 私たち人間が生きるために尊い命を犠牲にして、私たち人間のために食料となって尽くしてくれる牛さん達です。その牛さん達は自分で餌を探したり、好きなものを選んで食べることは出来ません。きれいな寝床を自分で探したり作ったりすることも出来ません。
 飼い主である、あなた達にすべては託されているのです。どうか住み心地の良い環境を作ってやってください。そうすればきっと牛さん達は恩返しをしてくれます。
 また、奇形で生まれてきて助からない命、病気や事故でどうしても助けてやれなかった命、牛飼いをしていればどれもが経験することです。そうして本来の生活を送れなかった牛さん達の気持ちをくみ取り、供養をしてあげてください・・・

 そして直会(神事の後に、神と一緒にご馳走を頂くことをなおらいと言います)では、感謝しながら宮崎牛を頂き、牛飼いの話でひとときを過ごします。

つづく

宮崎県椎葉村 椎葉 勇

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