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数面麻子のコラム
第142話:改めて、初乳④

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2016年8月26日

 初乳の良し悪しを決める基準として初乳中に含まれるIgG濃度があります。初乳1ml中に50mg以上のIgGが含まれているものが上質なものとのこと。しかし、どれくらいの免疫グロブリンが含まれているかなんて肉眼で確認できるわけではありませんし、品種や産歴によってかなりばらつきがあるようです。初乳の量としては1~2産の牛で少なく、IgGの濃度はお産を重ねた牛ほど高い傾向にあるようです。長く生きているほど沢山の病原体と戦ってきたでしょうから、長年生きた牛さんほど沢山の免疫を持っているのは納得できますね。初産の子牛の場合は初乳製剤で補ってやるとより高いIgG濃度を維持できると思います。

 初乳製剤だけしか与えられない場合ではどうでしょうか。近年初乳製剤の品質は向上しており、初乳製剤を1回与えた子牛と母乳を摂取した子牛で免疫グロブリンの差はなかったという報告もある一方、母乳給与との比較調査において初乳製剤のみでは十分な免疫を得られない可能性もあるという報告もあります。私が、母牛からの初乳を飲めない子牛に遭遇した場合は、できる限り12時間以内に2袋は飲ませるようにしています。それでも、その後に下痢をしたり発熱するなど体調を崩す子牛は少なくないので、やはり本物の初乳の力を実感させられます。

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