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蓮沼浩のコラム
第443話:下痢に初乳

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2016年7月7日

 高校時代剣道部に所属していたのですが、今でも同期で機会があれば毎年集まっています。本当に25年以上の付き合いになります。会えば一気に昔の状態に戻ります。どうしても仕事中心の世界ばかりになってしまうのですが、それ以外の方たちとの付き合いがあるのは本当にありがたいですね。

 最近気候が悪い日が続いたせいか、子牛の下痢が結構出ています。新人の笹崎獣医師と一緒に往診していると、ある一軒の農家さんで親についている子牛が数頭下痢をしていました。普段はほとんど下痢がない牧場なのですが、子牛の毛がボサツいて元気がありません。
おや?と思い、すぐに検査キットで糞便を調べると・・・・・

 クリプトスポリジウムが陽性です。

 今回はクリプトの単独感染だったのでひとまず安心。ロタウイルスとの混合感染になると症状はさらに悪くなります。あっという間に激しい水下痢をして、子牛は脱水して横倒しです。基本的にはクリプトに効果のある抗菌薬はありません。つまり、補液や生菌剤などを与えながら回復を待つしかないのですが、最近数はすくないですが、クリプトにも効果が認められる製品も出ています。小生は基本的には下痢の予防薬として使われているIgYを多く含む製品を治療で積極的に使っています。
 実は初乳というものは非常に優れたもので、子牛の下痢治療には超効果があると小生は思っています。その中の根拠の一つとして考えているのがいわゆる乳汁免疫という考え方です。初乳中に含まれる抗体が腸管の表面にバリアーをつくるのですね。そこでこの初乳と同じように乳汁免疫をつかさどるIgYを多く含む製品を規定量よりも多めに飲ませることで、しっかりと腸管を守ることができ、抗菌薬が効かないクリプトやロタに非常に効果があると実感しています。もちろん一番の基本は衛生対策をしっかりすることですが。

 クリプトは人間にも感染し、激しい下痢を発症させます。とくに新しく牧場に勤め始めた人や新人の獣医師が慣れない毎日の仕事で疲れて免疫が落ちている時に感染しますので注意してくださいね。基本は「うがい」と「手洗い」ですよ~。

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