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松本大策のコラム
お薬のお話し その4

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2016年6月27日

 ここのところ、抗生物質のお話しを続けていますが、本来ならば下痢と肺炎だけで良いので、自分の牧場の病原菌を調べておいて、それぞれのバイ菌に対する「効果のある薬剤」を解っているのが理想です。もちろん病原体には、バイ菌だけでなくウイルスや寄生虫などもありますから、それらも把握しておいた方が良いのはいうまでもありません。ウイルスには抗生物質が効かないので、ワクチンなどで個別に免疫を高めておくべきですし、寄生虫はその種類に合わせて予防的に駆除しておくべきです。

 しかしながら、現場ではそのような理想と異なり、とにかく目の前の病気をどうにかしなくてはならない、というケースが多いです。そのようなとき、手探りで目の前の病気に効く抗生物質を探していくことになりますが、獣医さんは症状からだいたいの当たりをつけて、そのバイ菌に効果的かつできるだけ安価なものから抗生物質を選択していきます。もちろん、それぞれの抗生物質には「出荷規制」がついていますから、目の前の牛さんの月齢や治癒する可能性、もしかしたら出荷する可能性、出荷した場合の時価総額、などを総合的に判断して、大きな肥育牛などでは可能な限り出荷規制の短い抗生物質を使うことも忘れません。

 それから、バイ菌やマイコプラズマの風邪が流行しているときは、はじめの1~2頭では、抗生物質の効果を手探りしますが、その子たちが治るまでには、効果的な抗生物質が判明するはずです。そうなったら、次に発症した牛さんの治療は「効果のあった抗生物質」から行うのが合理的です。場合によっては共済治療でも、「保険適応できない部分は手出ししますから、先生のもっとも良いと思う処置を実施して下さい」とお願いすれば、獣医さんの本領が発揮できます。共済制度は、ある意味保険業で、しかもいろいろなケースに対応する必要があるため、共済の獣医さんも様々な制約を受けており、自分の思うとおりの診療ができない事もあるのです。でも、共済制度のすばらしいところは「混合診療」が認められていることです。

 人間の健康保険制度では、「混合診療」が認められていないので、保険適応外の治療(末期ガンなどの際に、保険適応外で有効な治療もありますよね)を受けると、それまでの保険診療費を全額自腹で返還しないといけないのです。それに比べたら、適用外の薬剤費など知れたものです。地元の獣医さんと、しっかりコミュニケーションを取って、有効な治療を受けるようにしましょう。

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