(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第440話:病気の陰に隠れているもの

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2016年6月2日

 8月26日、オバマ大統領が広島の原爆慰霊碑の前で二名の被爆者の方とお互い笑顔で握手して語り合い、抱擁。わずか1分にも満たない時間。でも、この瞬間に言葉では言い表せないあまりにも多くのことを小生は感じてしまい、不覚にも涙が出てしまいました。この一瞬が人類にとって「星の時間」となりますように・・・。

 今、シェパードでは新人獣医師の笹崎先生が研修中です。先輩の獣医さんたちは毎朝のミーティングや夕方みんなでの雑談やら写真やデータを使ったちょっとした検討会、そして診療を一緒に回ってあれこれいろいろなことを教えてくれています。本当に頼もしいかぎりです。小生もあれやこれやと一緒に症例をみながら治療をしています。ヒトに教えるという事は自分の勉強にもなり、お互いに成長できるのでとてもいいですね。
 新人研修をするにあたり、牛さんを診療する時にとにかくシェパードで一番気をつかっていることがあるので、当たり前の事かもしれませんが紹介しますね。

 「必ず診断をつけて治療すること」

 これは松本院長からいつも口を酸っぱくして小生は注意されてきました。どうしても牛さんの臨床現場では検査等が限られているので何となくの感覚で治療してしまうことがあるのです。しかし、そこにいる牛さんは何が原因でそのような状態になっているのか?絶えず考えながらちゃんと診断をつけて、その診断にそった根拠のある治療を行う事。わからない時はいろいろと検査をし、教科書等で勉強し、ほかの獣医さんの意見を聞いて、農家さんといろいろと話し合い、方向性を定めて治療していくこと。この繰り返しによって獣医師としての技量は上がっていくと確信しています。診断を自分でちゃんとつけて、その診断にそってはっきりと根拠のある治療をしていく。当たり前のことですが、非常に大事なことです。

 そしてもう一つ大事なことはその病気の牛さんだけでなく、その病気が発生した陰に隠れている事柄にも絶えず注意を向けること。どうしても病気の牛さんだけに目が行ってしまいがちだけど、エサ、環境、気候、農家さんの性格や生活状況などそれこそ多種多様、様々なことが原因としてあります。そしてその結果が今目の前にある現状なのです。何故病気がでるのか?陰に隠れていることを常に考え続けることもとても大切です。大事なことは目に見えません。そこをいかにして見つけるか。難しいですね。

 偉そうにいいましたが、小生もいつも、いつも勉強することが多く試行錯誤の連続です!


人に教えることによって、教えた人も勉強になります。勉強することは尽きません。

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