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数面麻子のコラム
第130話:補液いろいろ②

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2016年5月27日

 今回は皮下補液についてです。皮下補液は吸収が穏やかなので、こちらも比較的安全に行うことができます。また、点滴のための静脈が確保できない場合に皮下補液を選択することがあります。皮下補液をする補液剤の選択としては基本的に等張液が良いです。ブドウ糖液は電解質を含まないので、皮下に入ったのち、牛さんの体が電解質を含まない糖液と自分の体の電解質を均一にしようとして、血管内の電解質が移動することで血液の電解質の状態に影響を与えてしまう可能性があるため好ましくありません。また、静脈経路ではアシドーシスの改善をしてくれる酢酸リンゲルや乳酸リンゲルも、皮下経路では逆にアシドーシスを悪化させてしまうことがあるのでこちらも注意が必要です。ですので、使いやすいものとしては生理食塩水や等張リンゲルが良いかと思います。

 なにかと制限がある皮下補液ではありますが、牛さんの皮下で吸収できる速度で水分を吸収してくれるこの経路は手法も容易であり、副作用等も少ない方法ですので利用する価値はあるかと思います。

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