(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
桐野有美のコラム
「ルワンダ便り−27 「わたしの1日(闇の世界・人の気配)」」

コラム一覧に戻る

2011年11月15日

 料理を始めてまもなく、断水になりました。蛇口をひねっても「しゅしゅしゅ・・・」という空気の音がするだけ。乾季はもちろん、雨季でもしょっちゅう水が止まります。でも数日だったら平気。ポリタンクにいつも水をためているので、いざとなったらそれをちびちび使います。さすがに断水が一週間を超えると、不衛生&不機嫌になったりもしますが、「いつかは水が出る」と信じて、あまり深く考えないことが大事です。

 また雨が降り出したせいか、夜になっても電気はいっこうに安定せず、ついたり消えたり。でもうちにある電気製品と言えば、電球とラジオとパソコンくらいのものなので、そんなに困りません。
 闇の世界のあたたかさ、にぎやかさ。
 停電で真っ暗な中、ろうそくの灯りでごはんを食べていると、自分がいろんな「気配」に包まれていることに気づき、あたたかい気持ちになります。庭で警備員のダニが大音量で聴いているラジオの声、隣のやんちゃ坊主ベルトラを叱りつけるママベルトラ(女の人は子供を産むと、最初の子の名前の前に「ママ」を付けてこう呼ばれるようになります)の声、そして家の前を行きかう人々が挨拶を交わす声・・・真っ暗でもまったく寂しくありません。そう、ルワンダはいつも隣人のぬくもりを傍で感じる国です。

 そうそう、初めのうちは抵抗のあったギュウギュウづめの乗り合いバス。どれくらいギュウギュウかと言いますと、8人乗りのトヨタハイエース(ぽんこつ)を改造し、ボロボロのシートに19人は乗せます。ファットなご婦人のおしりに両側からむぎゅっと挟まれて、接している部分がだんだん湿ってくるし、至近距離でジーッと凝視されるし、ひたすら話しかけてくるし、「もう!うっとおしぃなぁ・・・」と思うのだけど、毎日乗っているうちに、なんだかルワンダという国にすっぽり包まれているような、不思議な感覚をおぼえはじめます。ここには日本で言う「孤独」は存在しないのかもしれない、とふと思うことがあります。

|