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松本大策のコラム
やはり気になる子牛の風邪

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2016年1月18日

 先週から急に寒くなってしまいましたね。僕は、仕事で沖縄県の宮古島にいました。スタッフも「いいなぁ~、ボスは暖かいところで綺麗な海を眺められて!」とボヤいていたのですが、宮古島すらとても寒くて毎日雨の中の巡回で、僕もタイベックスーツの中に薄いダウンジャケットを着るくらいでした。もちろん海なんて眺めてもいません(涙)
 やはり神様は、日頃の行いをご覧のようです(笑)。

 ところで、寒くなると、やはり気になるのが「子牛の風邪」です。

 まず保温と換気の関係ですが、哺育中は保温優先、粗飼料をしっかり食べられる育成期に入ると換気優先、が基本です。
 哺乳子牛は、体温の維持機能が低く体力もないため、環境気温に常に気を配ってあげなくてはいけません。もちろん保温「優先」ですから、換気はどうでもいいという意味ではありませんよ。可能な限り保温と換気を両立させなければならないけれど、子牛が寒いと感じるよりは保温を優先する、ということです。

 このためには、温度計には現れない「風速の影響(ウインドチルファクターと言います)」も考慮してあげなければなりません。難しく考えることはないのです。ご自分の体感気温に気を配り、子牛の状態を観察しておけば解るはずです。

 また、とくに哺育子牛では、床が常に乾燥して暖かい状態を保つ必要があります。床が濡れていると保温どころではありませんし、子牛の免疫力の中心基地は、お腹の右側の小腸にある「腸管免疫機構」というところにあるのですが、ここの温度が1℃下がると免疫力が8パーセントも低下すると言われているのです。子牛が弱って肺炎などを起こしてから抗生物質にお金をかけるよりも、敷きわらにお金をかけたほうがよほど効果は高いですよ。

 さて育成以降の場合ですが、こちらは必ず「換気優先」にしてあげましょう。マイナス20℃でもです。ただし、必ず守っていただきたいことがあります。それは「良質の粗飼料を使う」ということです。育成期以降の牛さんは、第一胃で食べたものを発酵消化します。この時に出る発酵熱が、牛さんの体温の最も大きな発生源なのです。ですから、第一胃発酵が良好だと、お腹の中に巨大なホッカイロを入れてあるようなもので、環境温度の低下など気にもならないのです。あ、もう一つ忘れていました。餌やりの時間は一定にしましょうね。そうでないと発酵が乱れやすくなります。
 育成期以降では、第一胃の巨大なホッカイロのおかげで、第一胃にへばりついている小腸も温められているわけで、免疫の中心も冷えることなく免疫が維持されているのです。もちろん、床の凍らない地域では、床のぬかるみは作らないように注意しましょうね。

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