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戸田克樹のコラム
第59話「尿漏れの恐怖」

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2015年11月10日

曾木の滝。
紅葉を見に鹿児島県は伊佐市にあります曾木の滝へと馳せ参じました。
まだ色づいている葉は少なかったですが、涼しい空気と暖かな日差しに囲まれた静かな空間でゆるりゆるりと秋を感じておりました。

さて、肥育農家さんを悩ませる疾病として有名なもののひとつに尿石症なるものがございます。おしっこの中にできた小さな石がコロコロとできる病気です。人でも「いた~~い」病気として有名です。もしかして、これをご覧の皆様の中にも経験者がいらっしゃるかもしれませんね(笑)。

たとえ石が付いてしまっていても、おしっこがきちんと出るうちはまだ大丈夫。
問題は石が詰まっておしっこが出なくなってしまうこと。
先日、おしっこが出ないだけでなく、膀胱が破裂してしまった牛さんに遭遇いたしました。

えっ!!!?
破裂????

バーーーーンって???
え?????( ゚Д゚)

安心してください。
破裂とはいっても、そんなことは起きていません。

尿道が石で詰まり、尿をパンパンにため込んだ膀胱さん。
頑張って耐えますが、いずれ限界を迎えてしまうと粘膜に切れ目が生じ、尿がジワジワとお腹の中に漏れてきてしまうのです。ジワ漏れです。

こんな牛さんにはまず、尿道バイパスオペを実施。
具体的な手順については割愛しますが、つまった尿道を切断し、切断面からカテーテルをとおして膀胱内のおしっこの出口をつくってあげます。
この作業、膀胱までカテーテルを通すのがなかなか大変なのです。当診療所の蓮沼獣医師も奮闘しました!!!

これにより、膀胱内のおしっこはきちんと排泄され、お腹に漏れ出ることはなくなります。さらに内圧が弱まるので裂けてしまった膀胱粘膜の修復も素早く進むのです。

そして次に行うのはお腹に漏れだしたおしっこの排出。
尿がお腹にもれたままだと、内臓や筋肉に尿臭がくっついてしまいます。もちろん血管に吸収されて全身に回ってしまうことも。

そこで登場するのが留置針!

おしっこで膨満した腹壁に「ドスっ!!!」

勢いよく刺すと…。
 
 
 
こんな感じです。ジャーーーー。

気持ちい~~~♪

尿道カテ―テルでおしっこ排出。
お腹に漏れたおしっこは留置で排出。

あとはたっぷりの点滴で体を巡ってしまっている尿毒をどんどん排出させてあげましょう。

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